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贈与の制度

贈与にあたるケース

無収入・低額収入者への贈与

フリーターなどでほとんど収入がないにもかかわらず、親から高額な物を買ってもらった場合には、その分が贈与と見なされて贈与税の課税対象となります。
それを、贈与ではなくお金を貸し借りであると認定してもらうには、金銭消費貸借契約書、返済の計画を示す書面があり、その通りに返済ができる可能性があり、実際に返済が行われている必要があります。
見せかけの借入金は、贈与と見なされます。

なお、贈与税が課税された場合、その贈与税を支払えず他人に負担してもらった場合は、その負担してもらった贈与税額に対してさらに贈与税が課税されます。

数年分のお金をまとめて渡す

子どもの生活費や教育費を、数年分をまとめて子どもに渡した場合、贈与税の課税対象となります。
生活費や教育費は、必要に応じて都度渡すのであれば、贈与とはみなされません。
なお、生活費や教育費という名目で渡したお金を、別の用途で使用した場合には、贈与と見なされます。

みなし贈与

2014年5月 FP技能士3級 学科 問26より

個人の間で著しく低い価額の対価で財産の譲渡があった場合,原則として,その対価と財産の時価との差額に相当する金額について,贈与があったものとみなされる。

この記述は正しいです。
これを「みなし贈与」といいます。みなし贈与について記述のあるテキストは比較的多いと思いますが、過去には出題されていません。過去問だけに頼った勉強法では、この問題に対応できなかったかもしれませんね。

たとえば、時価が1000万円である財産(株式、金、不動産などをイメージしてください)を、100万円で譲ってもらったとします。
この時、差額の900万円得をしたことになりますよね。この得になった部分を、贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる、ということです。

ところで、本文の「著しく低い価額」という微妙な表現が引っ掛かりますね。
実務上、著しく低いかどうかは国税庁が個別に判断するとされています。
過去の裁判で、土地の譲渡を相続税評価額(時価の80%とされています)で行った場合に、この金額は「著しく低い価額」にあたらないとされた事例もあります。
一方で、上場株式など常に公正な時価が形成されるものの場合は、時価より低い金額であれば常に「著しく低い価額」とみなされるという考え方もあります。

このあたりの判断は税理士レベルの内容になりますが、FP試験対策としては、本問のような「みなし贈与」の概念を把握しておくことが重要ですので、これは覚えておきましょう。

定期贈与契約の終了

2016年1月 FP技能士2級 学科 問51より

1.定期贈与契約は、原則として、贈与者または受贈者の死亡により効力を失う。

この記述は適切です。
原則は本記述のとおりです。定期贈与の契約内容が、自動的に相続人に引き継がれることはありません。贈与契約は原則として、当事者間だけで有効な契約ですから、一方が死亡すれば契約の効力も失われることとなります。
例外として、いずれか一方が死亡したらその相続人に契約内容を引き継ぐ、というような内容を含めたうえで定期贈与契約を締結していれば、その内容が優先されます。

停止条件付贈与契約・解除条件付贈与契約

2012年5月 FP技能士3級 学科 問29より

【問題】
停止条件付贈与契約は,「大学に合格したら自動車を与える」というように,所定の条件が成就することによりその効力が生じる贈与契約のことである。

【解説】
この問題は○が正解です。この問題の解説だけでなく、類似の贈与契約についても説明します。

問題文にある通り、所定の条件が成立した時点より効力が生じる贈与契約のことを、停止条件付贈与契約といいます。原則として、贈与は契約の成立時点より効力が生じるのですが、所定の条件が成立するまで贈与の効力を停止させるという意味から、停止条件付贈与契約というのです。

ちなみに、これとは逆の贈与契約もあります。例えば、「毎月5万円を贈与し続けるが、大学に合格したらその贈与を取りやめる」という贈与契約です。
このように、所定の条件が成立することによりその効力を失う(贈与契約が解除される)贈与契約のことを、解除条件付贈与契約と言います。

さて、ここからちょっとややこしい話も付け加えます。
停止条件付贈与契約も、解除条件付贈与契約も、「所定の条件」は不確定な条件でなければなりません。その所定の条件が、将来確実に起こるものである場合は、別の名称の贈与契約となります。

例えば、「私が死亡したら、自動車を与える」というような贈与の場合です。「私が死亡する」という条件は将来確実に起こるものなので、これは停止条件付贈与契約ではなく、始期付贈与契約と言います。ピンときた方もいらっしゃるでしょうが、この例は死因贈与契約でもあります。実は、死因贈与契約は、始期付贈与契約の一種なのです。

始期付贈与契約とは逆に、「(大学在学中の者に対して)毎月5万円を贈与し続けるが、あなたが大学を卒業するか退学になったらその贈与を取りやめる」というように、将来必ず起こる所定の条件が成立したらその効力を失う贈与契約のことを、終期付贈与契約と言います。

贈与財産の取得時期

2018年5月 FP技能士3級 学科 問56より

贈与契約における財産の取得時期は、原則として、書面による贈与の場合は( 1 )、書面によらない贈与の場合は( 2 )とされる。

(1)に入る言葉は「贈与契約の効力が発生した時」、(2)に入る言葉は「贈与の履行があった時」です。
3級にしては、やや深いところを突っ込んだ問題だったと思います。

(1)に関して、口頭による贈与は、実際に財産の受け渡しがあるときまでは、いつでも撤回することができます。
そういう背景もあることから、贈与によって財産の受け渡しがあったその時が、法律上の財産を取得した時期となると考えるわけです。

(2)に関して、贈与契約書を作成した場合には、贈与契約を交わした日(贈与契約書に記載した日付)が、贈与により財産を取得した時期と定められています。
なので、契約書の日付に実際に財産の受け渡しが発生しなかった場合は、ちょっとややこしい話になってしまうのですが、それについてはFP3級の範囲を超えますので、税理士・弁護士の資格を取るときにお勉強してくださいね。

贈与と瑕疵の関係

原則的な瑕疵担保責任

贈与契約において、贈与の目的物に瑕疵があり、贈与者がその瑕疵の存在を知らなかったとしても、贈与者はその責任を負いません。
ただし、贈与者側が瑕疵があることを知りながらそれを受贈者に告げなかった場合は、例外として瑕疵担保責任を負う、と民法で定められています。

負担付贈与契約の瑕疵担保責任

2016年1月 FP技能士2級 学科 問51より

4.負担付贈与契約の贈与者は、その負担の限度において、売買契約の売主と同様の担保責任を負う。

この記述は適切です。
負担付贈与契約の場合は、贈与者は負担の限度において瑕疵担保責任を最初から負います。負担付贈与は、贈与者と受贈者ともに義務を負うため(売買契約と類似の契約とみなせる)、贈与者に瑕疵担保責任がないのは不平等です。そういった点から、負担付贈与の場合は、負担を限度として瑕疵担保責任を負うことになるのです。

夫婦間での贈与はいつでも取り消せる

2013年9月 FP技能士2級 学科 問51より

3.夫婦間でした贈与契約は、第三者の権利を害しない限り、婚姻中、いつでも夫婦の一方から取り消すことができる。

選択肢3は適切です。実は夫婦間においては、贈与契約書を締結したとしても、また贈与の履行が完了した後であっても、婚姻中ならばいつでもその贈与を取り消すことができるのです。
民法の条文には「夫婦間の契約は、第三者の権利を害しない限りは、婚姻中いつでも夫婦の一方から取り消すことができる」と記載があり、これが贈与の契約においてもあてはまるのです。
このように夫婦間の契約は、一般の契約とは異なるルールが適用されている点を、理解しておきましょう。

ちなみに、法律上は上記のように解釈されるのですが、いわゆる夫婦関係が破たんした状態の時には、婚姻関係が継続していても贈与契約を取り消せるとした最高裁判所の判例があります。離婚目前の夫婦間では、財産の所有権でもめることもありますね。
なお、このようなケースは、個別具体的なケースにおける法解釈が発生するため、弁護士の業務範疇になる点に注意が必要です。

贈与契約の撤回あれこれ

2014年5月 FP技能士2級 学科 問51より

贈与契約に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1.書面によらない贈与契約に基づく建物の贈与の場合、建物が受贈者に引き渡され、所有権移転登記がなされていても、贈与者は当該契約を撤回することができる。
2.書面による死因贈与契約は、原則として、遺言により撤回することができる。
3.負担付贈与契約に基づく負担を受贈者が履行しない場合、贈与者は当該契約を解除することができる。

贈与契約の撤回について、下記の通りまとめています。
はじめは簡単なお話からはじめ、順を追って複雑な事例について説明していきます。

通常の贈与契約の撤回

まず、通常の贈与契約は、書面で契約をした場合は、贈与者側から一方的に撤回をすることができません。
一方、口頭での契約など、書面によらない場合は、まだ履行されていない贈与については、贈与者側から一方的に撤回をすることができます。しかしすでに履行済みの贈与については、贈与者側から一方的に撤回することはできません。

したがって、選択肢1は不適切、となります。

負担付贈与の撤回

2016年9月 FP技能士2級 学科 問51より

4.負担付贈与では、受贈者がその負担である義務を履行しない場合において、贈与者が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、贈与者は、当該贈与の契約の解除をすることができる。

この記述は適切です。

負担付贈与契約の場合、本記述のように負担の履行がなされない場合は、贈与者側から契約の解除を行うことができます。
負担の履行後に贈与をするという性質上、その負担を履行する意思がないとみなされる状況となれば、契約の解除は可能となります。

なお、逆に負担がすでに履行されている状況であれば、贈与者側から契約の解除を行えなくなります。

死因贈与契約の撤回

続いて、贈与契約の中でも「死因贈与契約」の場合の撤回についてです。
死因贈与契約は、贈与者側から一方的に撤回をすることができます。書面で契約した場合であっても、撤回できます。
これは、死因贈与契約が遺贈のルールを準用するとされているため、指定した人に財産を贈与(遺贈)するかどうかは死亡時点で最終確定する、という考え方に基づくものです。この死因贈与の契約を、生前に撤回することも可能ですし、遺言によって撤回することもできます。

したがって選択肢2は適切です。

負担付死因贈与契約の撤回

ややこしいのは、死因贈与契約の中でも、「負担付死因贈与契約」に該当する場合です。
負担付死因贈与契約とは、「贈与者が死亡時に●●を贈与するが、それと引き換えに受贈者が△△すること」というような、互いに義務を背負う贈与契約です。
負担付死因贈与契約の締結後、贈与者の生前に、受贈者がその負担を一部でも履行した場合、その負担付死因贈与契約は贈与者からは撤回できないとされています。すでに負担を履行しているのに、一方的に当初約束した贈与を取り消されてしまうと、受贈者側が一方的に不利になるからです。
受贈者が負担を履行していない場合には、通常の死因贈与契約の場合と同じく、贈与者側から一方的に撤回することができます。

まとめ

贈与に関する撤回についてまとめましたが、撤回できる場合と撤回できない場合が複雑に定められています。
ややこしいですが、贈与や相続について詳細なアドバイスをする場合にも役立つ知識ですので、覚えておくとよいでしょう。

 


 

 

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