医療費控除
対象となる医療費の原則
医療が目的であること
医療費控除は、原則として病気やけがの治療に対してのみしか認められない。
病気の予防や美容などに関しての医療費は、医療費控除の対象にはならない。
例外的に、不妊治療や人工授精による医療費は、医療費控除の対象となりうる。
医師の判断であること
治療費や医薬品代は、それが医師の判断によるものであれば、医療費控除の対象となる。
患者が自ら希望して発生した医療関連費については、医療費控除の対象とならない。
たとえば差額ベッドについては、医師の判断で個室で入院したのであれば医療費控除の対象となるが、患者の希望で個室に入った場合は医療費控除の対象とならない。
例外として、医師の判断がなくても、市販の治療薬の購入代金が控除の対象になることもある。
年内支払発生基準
年内に現金で払ったもののほかに、年内にクレジットを利用して支払い行為を行った日(銀行口座で引き落とされる日ではない点に注意)が、その年に医療費控除の対象となる。
出産などで、年末〜翌年年始にまたがって医療費が発生する場合、年内に支払いを済ませられないか、医療機関に相談することも可能な場合がある。1年でまとめて払った方が節税効果も高まる。
対象となる医療費の例
妊娠・出産
- 妊娠中の検査、検診費用
- 検査、検診のための通院にかかる交通費(公共交通機関)
(タクシーは、やむを得ない緊急の場合のみ認められる)
(自家用車を利用した場合の交通費は認められない)
(実家への里帰りなどの名目の交通費は認められない) - 異常分娩、流産の場合の入院費、手術費
- 不妊治療、人工授精に関する費用
- 妊娠、出産に関する保険指導料
- 妊娠中絶の費用
(ただし、母体保護法/優生保護法に基づいて医師が行う場合に限る) - 入院中に、病院で出る食事代
(出前や外食などは、対象外) - 【対象外】紙おむつなどの育児用品
- 【対象外】妊娠検査薬・妊娠判定薬
入院・通院(けがや病気など)
- 医療機関に支払った医療費
- 治療に必要と医師が判断した場合の差額ベッド代
(自己都合による差額ベッドの場合は対象外) - 通院のための交通費(公共交通機関)
(タクシーは、やむを得ない緊急の場合のみ認められる)
(自家用車を利用した場合のガソリン代、駐車場代は認められない) - 付添人に支払った報酬や交通費
(ただし、患者の家族が付添人の場合は対象外) - 一人での通院が危険な場合の、付添人の交通費
- 遠隔地の病院への交通費(ただし、そこでしか治療ができないなどの理由が必要)
- 入院中に、病院で出る食事代
(出前や外食などは、対象外) - 【対象外】入院中に使用するテレビや冷蔵庫の購入費/レンタル代、洗面具代、パジャマやクリーニングなどの費用
薬・医療器具
- 風邪薬、胃腸薬などの医薬品。薬局で購入したものも対象となる。
ただし、治療目的に限る。 - 医師の指示による場合の、漢方薬やビタミン剤の購入費
(医師の指示でなければ、対象外となる) - 成人用おむつの購入費
(ただし、医師のおむつ使用証明書が必要) - 通院に必要となる松葉づえ
- 補聴器 (ただし、医師の処方箋が必要)
- 【対象外】マッサージ機や血圧計など、治療を目的としない器具
検査・療養
- 在宅で療養する場合の、保健師や看護師に支払う報酬
- 人間ドックやメタボ検診などの検査費・指導料
(ただし、重大な病気・症状が発見され、引き続きその治療が行われた場合に限る) - 厚生労働省認定のクアハウスの料金
- 【対象外】予防注射(インフルエンザもNG)、湯治
- 【対象外】健康維持のためのスポーツクラブの料金
歯や目の治療
- 治療でかかった治療費
- 金歯や入れ歯の費用
- 医師の指示で購入した、治療を目的とする眼鏡やコンタクトレンズ
- レーシックにかかった費用
- 発育段階の子供の、歯の矯正費
(美容を目的とする場合は対象外) - 弱視用眼鏡代
(ただし、20歳以下で矯正視力0.3以下である場合に限る) - 【対象外】歯垢除去費用、ホワイトニングの費用
(補足)
- 医療費をローンを組んで支払った場合、治療費に相当する部分は対象となるが、ローンの利子は対象外
誰が医療費を負担するか
家族でかかった医療費は、全員分を合算することができる。
医療費が十万円を超える場合は医療費控除の対象となるが、所得額が200万円以下の場合は、所得額の5%を超える部分が医療費控除の対象となる。
例) 所得額が160万円の場合は、8万円を超える部分が医療費控除の対象に。
このことを考えると、所得額が200万円に満たない者がいれば、その者が医療費を負担すれば控除のメリットを多く受けられる場合がある。
(ただし所得税の税率が高い人がいれば、その人が申告したほうが節税額は高くなることもある)
e-Taxでは、医療費控除の領収書は添付不要
2018年1月 FP技能士2級 実技(生保顧客) 問11より
3 「確定申告を行う場合、確定申告書を税務署に持参または送付して提出する方法のほかに、e-Taxを利用する方法があります。しかし、医療費控除の適用を受けるためには、原則として確定申告書に医療費等の領収書を添付しなければなりませんので、e-Taxを利用して確定申告をすることはできません」
この記述は不適切です。
e-Taxの場合は、領収書の添付は不要です。
ただしその領収書は、5年間は保管しておく義務がありますので、この点も覚えておきましょう。
先進医療の医療費控除
先進医療のページを参照してください。
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