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厚生年金関連

このページでは、主に老齢厚生年金について扱っています。
障害厚生年金については障害年金のページを、遺族厚生年金については遺族年金のページを参照してください。

在職老齢年金

制度の概要

日本には、在職老齢年金という制度があります。
これはもらえる年金の話ではなく、条件によって受け取れる年金を減額するという制度です
在職老齢年金の影響を受ける人は、60歳以上の年金受給者で、かつ厚生年金に加入している人です。
(自営業者は該当しません。)

在職老齢年金制度をざっくりわかりやすくたとえると、がんばって働いて2万円多く給料をもらったとしても、その一方で受給できる年金が1万円減額されるという制度です。労働の対価という観点で見れば、実質的に若者より時給が半額になるようなものです。
状況によっては、増えた給料と同額の年金が減るため、働いても総合的な収入は増えない、という事態も発生します。

在職老齢年金の対象にならない人

厚生年金に加入しない働き方、例えば自営業や、厚生年金に加入しないアルバイトなどなら、年金が減らされることはありません。

減額の対象となる年金の種類

在職老齢年金制度により年金が減額されるのは、報酬比例部分に相当する年金額に対して減額されます。

加給年金額、経過的加算額、繰り下げ支給の加算額、定額部分の額については、減額の対象とはなりません。

在職老齢年金+年金繰り下げ受給

在職老齢年金制度によって年金の支給額が減額された場合に、繰り下げ受給をした場合にもらえる年金額についてです。

この場合は、在職老齢年金によって減額された年金額に対して、繰り下げ受給で適用される割増率(1か月あたり+0.7%)を掛け算します。
したがって、在職老齢年金制度によって年金額が0円となってしまった場合は、繰り下げ受給を選択しても、年金を受け取ることはできなくなります。

在職老齢年金と加給年金との関係

在職老齢年金により年金額が減っても、一部でも年金が支給されていれば、加給年金は支給されます。
ただし、年金が全額支給停止になってしまった場合には、加給年金も支給停止となります。

特別支給の老齢厚生年金

遺族厚生年金と特別支給の老齢厚生年金との併給

2013年5月 FP技能士2級 学科 問7より

1.遺族厚生年金の受給者が特別支給の老齢厚生年金の受給権を取得した場合、遺族厚生年金と特別支給の老齢厚生年金は併給される。

この選択肢は不適切です。特別支給の老齢厚生年金と、遺族厚生年金とは、いずれか一方のみしか受給できません。実務上は、該当者はいずれかの年金を選択して受給することになります。その際、遺族年金は非課税所得ですが、特別支給の老齢厚生年金は雑所得として所得税の課税対象ですので、受給額だけでなく支払う税額も考慮して選択するようアドバイスをすることがFPには求められます。

加給年金と振替加算

被保険者期間が20年以上あっても、厚生年金の加給年金は支給されることはある

2018年1月 FP技能士2級 実技(生保顧客) 問2より

2.「妻Bさんの厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あるため、Aさんが65歳から受給する老齢厚生年金の額には、加給年金額は加算されません」

この記述は不適切です。
妻Bさんは20年以上の厚生年金の被保険者期間がありますが、だからといって加給年金が加算されないというわけではありません。
配偶者に20年以上の厚生年金の被保険者期間があっても、その配偶者に老齢年金の受給権が発生していなければ、加給年金は加算されます。

本問のケースでは、Aさんが65歳になった時に妻Bさんは57歳であるため、Bさんにはまだ老齢年金の受給権が発生していません。したがって加給年金は加算されることになるのです。

60歳到達時点で第2号被保険者でない場合

2013年9月 FP技能士2級 実技(きんざい 個人資産) 問3より

加給年金を受給するためには、過去に厚生年金に20年以上加入していればよいのです。60歳到達時点で厚生年金に加入していなければならないと考えてしまった方もいるかもしれませんが、それは要件にはありません。
60歳到達時点で厚生年金に加入していなくても、他の要件を満たしていれば老齢厚生年金はもらえますよね。その老齢厚生年金と合わせて加給年金が支給されるのだと理解すればよいでしょう。

配偶者加給年金の、特別加算について

2014年9月 FP技能士2級 実技(FP協会) 問32より

(老齢厚生年金に加算される配偶者加給年金額について)
受給権者が昭和9年4月2日以後生まれであるときは、配偶者加給年金額に( ウ )の生年月日に応じた特別加算があります。

( ウ )に入る言葉は「受給権者」です。
これはなかなか細かい点をついてきた問題ですね。

老齢厚生年金に加算される加給年金の額は、実は、全員一律ではありません。
本記述の通り、受給権者の生年月日によって加算額が決まっています。

何年何月何日生まれの人が、いくら加算されるのか、ということまで細かく規定されていますが、FP2級ではそこまで覚える必要はありません。
誕生日が遅いほど(あとで生まれた人ほど)特別加算額は段階的に上昇し、昭和18年4月2日以後生まれの人は全員同額で最も多い特別加算額となります。

ひとまず試験対策としては、「加給年金の額は生年月日によって異なる金額である」という点を理解しておきましょう。

加給年金と振替加算の受給者

2012年9月 FP技能士2級 学科 問6

3.老齢基礎年金に加算される振替加算の額は、その老齢基礎年金の受給権者の生年月日に応じて定められた金額となる。

まず、加給年金関連で知っておくべき知識となりますが、加給年金は国民年金第2号被保険者が受給しますが、振替加算はその第2号被保険者の配偶者が受給するものです。加給年金と振替加算の受給者は同一人物でないという点を理解しておきましょう。

さて、これを踏まえて選択肢の解説です。選択肢3は適切です。
振替加算の額は第2号被保険者の配偶者の生年月日によって金額が定められています。すなわち、振替加算の受給者の生年月日によって金額が定められるということになります。振替加算と老齢基礎年金とは同時に受給権が発生するので、「振替加算の額は、その老齢基礎年金の受給権者の生年月日に応じて定められた金額」ということができるのです。

繰下げ受給との関係

2013年1月 FP技能士2級 学科 問5より

4.老齢厚生年金の支給繰下げの申出をした場合、加給年金額は繰下げによる加算額を算出する際の対象となる年金額から除かれる。

この選択肢は適切です。老齢厚生年金の繰下げ支給を申請すると、老齢厚生年金自体の受給額は1か月あたり0.7%増額されます。しかし、加給年金と振替加算額については、この増額の対象とはなりません。つまり、繰下げしてもしなくても、加給年金と振替加算額は同じ受給額となります。
ちなみに、老齢厚生年金の繰下げ申請により、65歳以降老齢厚生年金を受給していない期間は、加給年金も支給停止となります。加給年金の受給と、老齢厚生年金の受給は、常にセットで受給するルールとなっているからです。

在職老齢年金と加給年金との関係

在職老齢年金により年金額が減っても、一部でも年金が支給されていれば、加給年金は支給されます。
ただし、年金が全額支給停止になってしまった場合には、加給年金も支給停止となります。

保険料の徴収

賞与から天引きされる場合とされない場合

2013年9月 FP技能士2級 学科 問4より

3.厚生年金保険の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)に保険料率を乗じて計算され、年3回以下の回数で支給される賞与は保険料の賦課対象とならない。

選択肢3は不適切です。年3回以下の回数で支給される賞与は保険料の賦課対象(保険料が天引きされる対象)となっています。
逆に、年4回以上の回数で支給される賞与は、保険料の賦課対象とはならず、保険料が天引きされることはありません。実は「年4回以上の賞与は給与と見なす」という社会保険制度上の規定があるため、年4回以上払われる賞与は「給与」とみなされるのです。
この場合、毎月の給与+(年間に受け取る賞与の総額÷12)に対して厚生年金保険料が計算され、毎月天引きされることになります。つまり、賞与の金額に係る保険料は、毎月の給与から天引きされるということになるのです。

ちなみに・・・
約760万円以上の年収の社員に賞与を1〜3回支払っている場合は、賞与を4回にする(または賞与分を月給に加算する)ことで、その社員に関する社会保険料の削減効果が得られることが知られています。
詳しいことは、これに関するWebサイトや書籍がありますので、より深く知りたい場合はそちらを参考にしてみてくださいね。

会社員は、何歳まで厚生年金保険料を払い続けるのか
(厚生年金の被保険者の年齢要件)

2016年9月 FP技能士2級 学科 問3より

3.厚生年金保険の被保険者は、その適用事業所に常時使用される者であっても、65歳に達すると被保険者資格を喪失する。

この記述は不適切です。
65歳に達したからと言って、被保険者資格は喪失しません。

この観点での出題は、過去に実技試験ではありましたが、学科では初めてか数年ぶりでしょう。
これはなかなか細かい点を突いた問題ですので、内容をよく理解しておきましょう。

会社員勤めの方は、強制的に70歳までの間は厚生年金の被保険者となり、保険料を負担する必要があります。たとえ年金をもらっていてもです。
しかし70歳以後になると、法律上、厚生年金保険の被保険者でなくなるので、保険料負担はなくなります。

ところで、国民年金の第2号被保険者の年齢は、65歳までと皆様のテキストに記載があると思います。
これも、正しい記述です。

ここで押さえていただきたい点なのですが、次の2つ

は、それぞれ別個の概念なのです。
ここを混同して理解しないよう、ご注意ください。

ですので、本記述のように65歳以上70歳未満の会社員の方は、国民年金の第2号被保険者ではありませんが、厚生年金の保険料負担があるので「被保険者資格は喪失していない」ということになるのです。

ややこしい内容ですが、理解しておいてくださいね。

 

【類題】2014年5月 FP技能士2級 実技(きんざい生保) 問3より

(3)Aさんが70歳以後もX社に勤務した場合,Aさんは厚生年金保険の被保険者ではなくなりますので,厚生年金保険の保険料負担はありません

この記述は適切です。

支給事由が異なる2つの年金の併給

2012年5月 FP技能士2級 学科 問7より
2013年5月 FP技能士2級 学科 問7より

原則として、支給の事由が異なる2つの年金は併給(両方とも受給すること)ができません。
言い換えると、以下の場合は同一事由の支給なので、併給が可能です。

したがって、これ以外の組み合わせは、原則として併給ができないということです。異なる2つの年金を併給できるときは、いずれか一方のみを選択して受給することになります。
例えば、老齢基礎年金と障害厚生年金の両方を受給する権利があった場合には、老齢基礎年金または障害厚生年金のいずれか一方のみしか受給できないということです。

しかし、異なる2つの年金を併給できないという原則には例外があり、過去の法改正により、下記の組み合わせは認められるようになりました。

65歳以降の、障害基礎年金+老齢厚生年金

障害年金を受給していた人が65歳になった時、受給中の障害基礎年金に加えて、自身の老齢厚生年金とを併給することができます。
ただし65歳になるまで障害厚生年金を受給していた場合には、引き続き障害厚生年金を受給するか、自身の老齢厚生年金を受給するかを選択しなければなりません。(比較して、多くもらえるほうを選択すればよいです)

なお、通常は「障害基礎年金≧自身の老齢基礎年金」となるため障害基礎年金から老齢基礎年金に切り替える必要はありません。

65歳以降の、障害基礎年金+遺族厚生年金

障害基礎年金を受給していた人の配偶者が死亡した場合、また遺族厚生年金を受給していた人が障がい者になってしまった場合などが、このケースに該当します。

なお、これと異なり、遺族基礎年金+障害厚生年金の組み合わせは、65歳以降でも併給はできません。

65歳以降の、老齢基礎年金+遺族厚生年金

2014年1月 FP技能士2級 学科 問7より

1.老齢基礎年金の受給権者が65歳以降に遺族厚生年金の受給権を取得した場合、老齢基礎年金と遺族厚生年金は併給される。

この選択肢は適切です。本選択肢に該当するケースとしては、夫婦ともに65歳以上で、老齢厚生年金を受給している夫が亡くなった場合です。この時、妻は自身の老齢基礎年金に加えて、夫の死亡による遺族厚生年金も併給できます。
ただし、妻が自身の老齢厚生年金を受給しているときには、妻自身の老齢厚生年金と遺族厚生年金との間で併給調整がありますので、この点はご注意ください。

以上は夫の死亡を例にとりましたが、妻が死亡した場合には夫婦を読みかえて解釈してください。

65歳以降の、老齢基礎年金+老齢厚生年金+遺族厚生年金

遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方の受給権がある場合の調整 のページをご覧ください。

併給の一覧表

○:65歳未満でも併給可能、△:65歳以上であれば併給可能、×:年齢に関係なく併給不可

  老齢
厚生
障害
厚生
遺族
厚生
老齢
基礎
×
障害
基礎
遺族
基礎
× ×

離婚に伴う年金分割

時効(請求できる期間)

2014年5月 FP技能士2級 学科 問6より

2.合意分割の請求は、原則として離婚をしたときから2年を経過するまでの間にしなければならない。

この選択肢は適切です。この記述の通り、2年以内に請求をしなければなりません。

金額の分割であり、期間の分割ではない

2019年1月 FP技能士2級 学科 問7より
(2014年5月 FP技能士2級 学科 問6も類題)

2.離婚の相手方から分割を受けた厚生年金保険の保険料納付記録(標準報酬月額・標準賞与額)に係る期間は、老齢基礎年金の受給資格期間に算入される。

この選択肢は不適切です。文末の「算入される」を「算入されない」に直すと正しい文章になります。
この文章は言い回しが専門用語だらけですが、この文章の意味をひとつずつ理解しましょう。

そもそも年金を分割しても、分割前(結婚中)は夫も妻も、国民年金第2号または第3号として年金納付記録があります(=未納ではない)ので、離婚によって改めて受給資格期間を加算(算入)する必要はないのです。

別の言い方をしましょう。もし仮に「老齢基礎年金の受給資格期間に算入される」とすると、次に述べるようなおかしな事態になってしまいます。

ある女性Aさんは30歳で夫Bさんと結婚し、Aさんが50歳の時に離婚したとします。Aさんは20歳から離婚の50歳まで、国民年金の1号〜3号のいずれかとして納付記録があるとします。
このとき、Aさんの婚姻期間は20年、50歳で離婚するまでの納付記録は30年(20歳〜50歳)となります。
もし仮に、「老齢基礎年金の受給資格期間に算入される」とすると、離婚によって年金の納付記録は
・Aさん本人の納付記録30年
・年金分割により、婚姻期間の半分の10年
が合算され、納付記録の期間が40年ということになってしまいます。
この時点で40年という受給資格期間を満たし、しかも老齢基礎年金を満額もらえることになってしまいます。つまり、50歳以降年金を払わなくても満額もらえる、というおかしなことになります。

言い方を変えながらご説明しましたが、本選択肢が不適切であることがわかりましたでしょうか。
ここでいう年金の分割は、あくまでも厚生年金における年金受給額のみ影響があるお話です。受給資格期間に影響はありません。
年金用語の理解の深さが、正誤を見極められるかどうかの重要ポイントになる選択肢でした。

雇用保険との併給

雇用保険と老齢年金との併給のページにまとめています。こちらを参照してください。

 


 

 

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