雇用保険
被保険者の条件
アルバイトであっても要件を満たせば雇用保険への加入が必要
2017年9月 FP技能士2級 学科 問5より
1.雇用保険の適用事業所に雇用される者であっても、アルバイトは、雇用保険の被保険者となることはない。
この記述は不適切です。
パートタイマーやアルバイトとして雇用されていても、次の条件をすべて満たす場合には、雇用保険の被保険者となります。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 月額賃金が88000円以上であること
- 学生でないこと
- 従業員規模が501人以上の企業であること
(ただし従業員規模が500人以下の会社でも、労使で合意があれば加入対象となる)
2016年10月からこのとおり改正されています。
要件は細かいですが、しっかり覚えておきましょう。
基本手当
受給期間の延長
2019年1月 FP技能士2級 学科 問4より
4.基本手当の受給期間中に、妊娠、出産、育児等の理由で引き続き30日以上職業に就くことができない者は、所定の申出により受給期間を延長することができるが、受給期間は最長4年間が限度となる。
この記述は適切です。
離職後、「妊娠、出産、育児等の理由で引き続き30日以上職業に就くことができない」という場合には、基本手当の受給可能期間を意味する「受給期間」を延長することができます。
本来の受給期間の1年間に加えて、最大で3年まで延長できます。よって、受給期間の限度は1年+3年で、最大4年間となります。
基本手当を受け取る「給付日数」が延長されるわけではありません。
受給期間と給付日数の意味の違いを、改めてお持ちのテキストなどを使い、正確に理解しましょう。
出産や疾病以外にも、親族の介護、配偶者の海外転勤による一時的な海外移住の場合にも、受給期間の延長ができます。
なお、受給期間の延長手続きができる期間は、働くことができない状態が30日経過した日の翌日から1カ月以内となっています。
もし、離職後に出産や疾病などですぐ働けない方が身近にいらっしゃれば、このことを伝えてあげましょう。延長手続きの期間は1か月と短いですので、早めに手続することが大切です。
基本手当の受給に関する年齢要件
2015年1月 FP技能士2級 学科 問5より
1.(雇用保険の基本手当に関して)基本手当は、離職の日以前に一定の被保険者期間を有する70歳未満の者が受給することができる。
この選択肢は不適切です。
「70歳未満」を「65歳未満」に直すと、正しい文章となります。
雇用保険の基本手当は、65歳未満で離職した場合に受給できるものです。年齢制限がある点を理解しておきましょう。
なお、65歳以上で離職した場合ですが、この場合は「高年齢求職者給付金」という一時金が支払われます。高年齢求職者給付金については、このページの後で解説しています。
定年退職後の受給
2015年5月 FP技能士3級 実技(きんざい個人資産) 問2より
3) 「Aさんは,60歳でX社を定年退職した場合,所定の手続により,雇用保険から基本手当を受給することができます」
この記述は適切です。
定年退職した場合であっても、基本手当(いわゆる失業給付)を受給することはできます。
ただし、定年退職後に再就職する意思を持って就職活動をすることが、受給の要件となっています。
雇用保険での賃金日額
2019年1月 FP技能士2級 学科 問4より
3.基本手当日額の算定に用いる賃金日額とは、被保険者期間として計算された最後の6ヵ月間に臨時に支払われた賃金および賞与等を含む賃金の総額を180で除して得た額である。
この記述は不適切です。
「臨時に支払われた賃金および賞与等を含む賃金」を「毎月支払われた賃金(賞与等は除く)」に直すと正しくなります。
賃金日額の定義について問う問題でしたが、賞与は含まれないという点を理解しておきましょう。
ちなみに、この賃金日額の45%〜80%が、基本手当日額となります。
45%〜80%と書きましたが、これは年齢や賃金日額によって異なる数値であり、賃金が低いほど高い率となるよう調整された割合となっています。
高年齢求職者給付金
2016年9月 FP技能士3級 実技(きんざい個人資産) 問2より
2) (雇用保険に関して)「AさんがX社を65歳以降に退職した場合、所定の手続により、高年齢求職者給付金を受給することができます」
この記述は適切です。
一般に、離職したときは雇用保険の基本手当を受給できます。
しかし基本手当を受給できる年齢が定められており、65歳以降の人はこの基本手当を受け取れないのです。
その代わり、65歳以上で離職した場合には、本記述のとおり「高年齢求職者給付金」という一時金が支払われます。
この一時金の給付額は、雇用保険の加入期間によって30日分または50日分です。基本手当と比較すると、受給額は少なくなっています。
65歳未満か以上かで、給付の種類が異なることを理解しておきましょう。
高年齢雇用継続給付金と高年齢再就職給付金
共通している点
支給対象者の条件として、以下の点が共通です。
- 60歳以上65歳未満の被保険者であること
- 雇用保険の被保険者期間(算定基礎期間ともいう)が5年以上であること
- 賃金額が、60歳到達時点の賃金の75%未満であること
賃金額が、60歳到達時点の賃金の61%以下の場合、最高率の15%が支給されます。
異なる点
2015年9月 FP技能士2級 学科 問4より
高年齢雇用継続給付金は、基本手当を受給しないで再就職した場合に支給されます。
支給の期間は、65歳になるまでです。
高年齢再就職給付金は、基本手当を受給して再就職した場合に支給されます。
支給の期間は、基本手当の所定給付日数の支給残日数によって、以下のようになっています。
- 支給残日数が100日以上あれば、最高で1年間
- 支給残日数が200日以上あれば、最高で2年間
- 上記いずれの場合も、65歳になるまでという制限あり
高年齢雇用継続給付金の額
2015年5月 FP技能士3級 実技(きんざい個人資産) 問2より
2) 「高年齢雇用継続基本給付金の額は,60歳到達時の賃金月額に所定の支給率を乗じて算出されます」
この記述は不適切です。
高年齢雇用継続基本給付金の額は、60歳到達時の賃金月額と比較してどれくらいに低下したか、その低下の度合いに応じて支給率が算出されます。
そうとわかっていても、問題の文章の解釈を読み間違えやすいので、気を付けてくださいね。
なお、60歳以降の賃金が、60歳到達時の賃金月額の75%以上である場合には、高年齢雇用継続基本給付金は支給されません。この点も押さえておきましょう。
育児休業給付金
被保険者期間の要件
2015年9月 FP技能士2級 学科 問4より
3.育児休業給付金を受給するためには、原則として、一般被保険者が育児休業を開始した日前2年間に、みなし被保険者期間が通算して12ヵ月以上なければならない。
この記述は適切です。
この被保険者期間の要件は、雇用保険の基本手当と同じですね。
支給限度額と最低限度額
2017年1月 FP技能士2級 実技(きんざい個人資産) 問2より
3 「妻Bさんが所定の手続により受給することができる雇用保険の育児休業給付金には、支給限度額および最低限度額が設けられており、これらの額は、原則として毎年8月1日に改定されます」
この記述は適切です。ちょっと細かい話ですね。
育児休業給付金の金額は、休業開始時の賃金の66%(最初の1年半)、または50%(1年半後以降)となっています。
ただし、この金額には最低限度額(最低金額)と支給限度額(最高金額)が定められており、
- 最低限度額を下回る場合には最低限度額が、
- 支給限度額を上回る場合には支給限度額が、
支給されることとなります。
この最低限度額と支給限度額は、ともに毎年8月1日に改定されています。
社会保険料が免除される場合の、子の年齢要件について
2019年5月 FP技能士2級 実技(FP協会)問33より
「育児・介護休業法による満(ア)未満の子を養育するための育児休業等期間に係る健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者から育児休業等取得の申出があった場合に、その育児休業等をしている被保険者の勤務先の事業主が日本年金機構に申し出ることにより、(イ)免除されます。」
(ア)に入る言葉は「3歳」、(イ)に入る言葉は「被保険者・事業主の両方の負担分が」です。
育児休業中に健康保険料・厚生年金保険料が免除になるのは、2級では基本事項ですし、(イ)はぜひ答えられるようになってほしい問題です。
ただ、(ア)の答えまで分からなかった方は多いのではないでしょうか。
(ア)に関しては、育児休業における子供の年齢は3歳未満である点を覚えておきましょう。
育児休業とはいえ、子供が何歳の時でも保険料が免除になるわけではないのです。
介護休業給付金
介護の対象となる家族
2019年5月 FP技能士2級 学科 問4より
(2015年9月 FP技能士2級 学科 問4も類題)
4.介護休業給付金の支給において介護の対象となる家族には、雇用保険の被保険者の配偶者の父母も含まれる。
この記述は適切です。
介護休業給付金の支給において、介護の対象となる家族は、次の通りです。
- 配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
※2017年1月以降、介護の対象となる家族に対して扶養・同居の要件はなくなりました。
今後は、介護に対する社会的ニーズも大きくなってくるでしょう。
介護休業給付の細かい点も、理解しておきましょう。
被保険者期間の要件
介護休業給付金の被保険者期間の要件は、「休業開始した日前2年間に、被保険者期間が通算して12ヵ月以上」となっています。
これは、雇用保険の基本手当や育児休業給付金の被保険者要件と、同じですね。
また、同一家族について延べ93日間が支給の上限となります。なので複数人を介護する場合、例えば配偶者の介護の後に母親の介護をするような場合は、それぞれの介護休業で93日間の支給を受けられるということになります。
雇用保険と老齢年金との併給
2013年5月 FP技能士2級 学科 問7より
4.特別支給の老齢厚生年金は、その受給権者が雇用保険の基本手当を受給している期間、原則として、支給停止となる。
この選択肢は適切です。雇用保険の「基本手当」を受給している期間は、特別支給の老齢厚生年金そのものが全額支給停止となります。
本選択肢とよく似たケースですが、特別支給の老齢厚生年金と、雇用保険の「高年齢雇用継続給付」とを併給した場合は、標準報酬月額の6%を限度にして厚生年金が一部支給停止となります。
このように、全額支給停止か一部支給停止かも含めて、雇用保険との併給について理解しておきましょう。
2014年1月 FP技能士2級 学科 問7より
3.特別支給の老齢厚生年金および繰上げ支給の老齢基礎年金を受給している者が雇用保険の基本手当を受給する場合、特別支給の老齢厚生年金および繰上げ支給の老齢基礎年金はいずれも支給停止となる。
この選択肢は不適切です。
雇用保険の基本手当を受給する場合、特別支給の老齢厚生年金は支給停止となります。しかし一方で、繰上げ支給の老齢基礎年金は支給停止とはなりません。
基本手当と老齢年金との支給調整について、下記の通りまとめていますので、参考にしてください。
- 老齢基礎年金 → 繰上げ、繰下げ関係なく、基本手当と併給可能
- (特別支給でない65歳以降受給できる)老齢厚生年金 → 基本手当と併給可能
- 特別支給の老齢厚生年金 → 基本手当と併給不可。いずれか一方のみ受給可能。
雇用保険と遺族年金(障害年金)との併給
2017年1月 FP技能士2級 学科 問7より
3.遺族厚生年金の受給権者が雇用保険の基本手当の支給を受けている間、遺族厚生年金は支給停止となる。
この記述は不適切です。
雇用保険の基本手当の支給を受けていても、遺族厚生年金は支給停止とはなりません。
ちなみに、本記述のように雇用保険の基本手当の支給を受けている間は、「老齢厚生年金」の方は支給停止となります。
このページですでにご説明したとおりです。
これは試験対策テキストにも書いてありますから、覚えておいてくださいね。
もう一つちなみに、「障害厚生年金」の受給権者が雇用保険の基本手当の支給を受けている間は、障害厚生年金は支給停止とはなりません。これは遺族厚生年金の場合と同じ扱いとなります。
雇用保険料は、2つの内訳からなる
2017年9月 FP技能士2級 学科 問5より
2.雇用保険料のうち、失業等給付の保険料は、被保険者の賃金総額に事業の種類に応じた雇用保険率を乗じて得た額を事業主が全額負担する。
この記述は不適切です。
雇用保険料の内訳に関する問題です。1級では過去に出題はあったのですが、2級では初出題かと思います。
実は雇用保険料は、内部で2つの保険料に分けられます。
一つが、本記述にある失業等給付に関する保険料です。離職時に受け取れる「基本手当」の原資となるお金です。
こちらの保険料は、労使折半です。事業主が全額負担するわけではないので、本記述は不適切となるのです。
ちなみにもう一つの保険料は、「雇用安定事業と能力開発事業」に関する保険料です。
例えば、高年齢雇用継続給付金や、職業訓練給付金などの原資となるお金です。
こちらの保険料は、事業主が全額負担します。従業員は負担しません。
このように、雇用保険料は内部で2つに分けられている点を理解しておきましょう。
- FP技能士3級と2級の過去問から、難問(試験対策テキストには記述がない問題、多くの人が間違えやすい問題など)を中心に解説しています。
正解だけでなく、問題の背景や周辺知識も含めて解説しています。 - 万一記述に誤りがあると思われた方は、お問い合わせページよりお知らせください。正しい内容をお知らせし、当サイトも訂正します。
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