法人の決算書分析
流動比率
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
イメージとして、「すぐに返さなければならない借金をすぐに返すことができる能力」を表します。
値が高い方が、財務上望ましい。
当座比率
当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
当座資産とは、流動資産の中でも特に換金しやすい資産です。
例えば、現金、預貯金、手形、売掛金、換金容易性の高い株式などです。
イメージとして、「流動比率をさらに厳しく見たときの借金返済能力」を表します。
値が高い方が、財務上望ましい。
固定比率
2016年9月 FP技能士2級 実技(中小事業主) 問7より
固定比率 = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100
の計算式で計算され、設備投資などの固定資産への投資が、自己資本によってどの程度まかなわれているかを表す指標です。
値が低い方が、財務上望ましいとされています。
この比率が100%を超えている場合、会社の資産を、借金などの負債で賄っていることになります。
この値が高いと、過剰な設備投資をしていると判断することもできます。
固定長期適合率
2016年9月 FP技能士2級 実技(中小事業主) 問7より
次の計算式で計算されます。
固定長期適合率 = 固定資産 ÷ (自己資本+固定負債) × 100
※本問では自己資本の額が明記されていませんので、自己資本=純資産と考えて計算をします
たとえ固定比率が100%を超えていても、長期的に負債を返済できれば問題ありません。
固定長期適合率は、固定比率より緩い見方をしたものであり、「長期的な視点での設備投資が適切かどうか」を判断するのに使えます。
値が低い方が、財務上望ましいとされる点は、固定比率と同じです。
この値が100%を超えると、長期的どころか、短期的な視点でも資金繰りが不安定と判断することもできます。
自己資本比率
2017年5月 FP技能士2級 学科 問9より
<X社の貸借対照表に関して>
4.X社の自己資本比率は、「200÷600×100(%)」で計算される。
この記述は不適切です。
一般的に自己資本比率は、「自己資本÷総資本」で計算します。
ところが、本問は「自己資金」という表記はなく、それに該当する「純資産合計」の金額を使います。
また、本問には「総資本」という表記はなく、それに該当する「負債・純資産合計」の金額を使います。
したがって、答えは下記の通りになります。
純資産合計÷負債・純資産合計
=600÷1200×100=50%
計算式を覚えることはもちろん、それが何を意味しているのか、というところも含めて理解しておきましょう。
そうすることで、用語が変わっても正しく回答できるようになります。
売上債権回転期間
売上債権回転期間とは、商品を販売してからその売上債権を回収するまでにかかる期間を表す指標です。以下の計算式で計算します。
売上債権回転期間 = 売上債権残高 ÷ 売上高 × 100
※売上債権残高とは、売掛金や受取手形など債権の合計金額です。
この期間が短いほど、早期に債権を回収しており、経営効率や資金効率が良いと判断することができます。
売上債権回転率
売上債権回転率とは、売上債権の回収効率を表す指標です。
売上債権回転期間の逆数のことでもあります。
売上債権回転率
= 売上高 ÷ 売上債権残高 × 100
= 1 ÷ 売上債権回転期間
この数値が大きいほど、早期に債権を回収しており、経営効率や資金効率が良いと判断することができます。
所要運転資金
2016年9月 FP技能士2級 実技(中小事業主) 問7より
2017年9月 FP技能士2級 実技(中小事業主) 問7も類題
1.X社の所要運転資金は23,500千円であり、X社の売上高が4%増加すると所要運転資金は940千円増加する。
この記述は不適切です。
所要運転資金とは、簡単に言うと、物を仕入れてから販売するまでに要する資金額です。
先に仕入れがあり、売上額を回収するのはそのあとになります。この循環を回すために必要となる資金額でもあります。
銀行からお金を借りるときには、重要視される指標ともいわれています。
所要運転資金の計算式は、一般的に次のいずれかで表されます。
どちらの計算式も、意味している内容は同じです。
- (受取手形+売掛金+棚卸資産)−(支払手形+買掛金)
- (売上債権+棚卸資産)−(買入債務)
です。これに従うと、
(売上債権57200+割引手形22800+棚卸資産39800)−(買入債務73500) = 46300
が所要運転資金となります。
問題文中に、割引手形が売上債権から除外されていると書かれています。つまり、問題文中の売上債権は、単に売掛金のことを意味しています。したがって、受取手形の金額も加算する必要があります。
さて、次に売上高が増加したケースについてです。上記計算式の
(受取手形+売掛金+棚卸資産)−(支払手形+買掛金)
に含まれる5項目は、いずれも売上高に比例する数値と考えます。
なぜなら、売り上げが2倍になると、売掛金などの売上債権2倍になり、在庫を抱える量も2倍になり、買い入れ(言い換えると仕入れ)に必要となるお金も2倍になるからです。
(経営構造に変化がないことを前提に考えます)
したがって、売上高が4%増えれば、所要運転資金も4%増えるので、その増加額は
46300千円×4%=1852千円増加する、といえます。
以上が解説となりますが、本問は簿記の知識も必要となるので、簿記に慣れていない方にはハードルが高かったかもしれません。
実際、企業が売り上げ増加に伴って借り入れを希望する場合、銀行担当者はこの所要運転資金の金額やその増加額も考慮して、審査業務にあたっています。
キャッシュフロー計算書
営業活動によるキャッシュフロー
本業による収入と支出に関する現金の流れを表します。
売り上げによる現金収入があれば、このキャッシュフローは増加します。
経費の支払いや仕入れによる現金の支出があれば、このキャッシュフローは減少します。
投資活動によるキャッシュフロー
固定資産、有価証券などの売買による現金の流れを表します。
これらの資産を売却して現金の流入があれば、このキャッシュフローは増加します。
逆にこれらの資産を購入するなどして(設備投資を行うなど)現金の支出があれば、このキャッシュフローは減少します。
財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)
企業の資金調達におけるお金の流れを表します。
銀行からお金を借りたり、社債や株式を発行して資金調達して現金の流入があれば、このキャッシュフローは増加します。
銀行から借りている借金を返済したり、利息や配当の支払いを支払うことで現金の支出があれば、このキャッシュフローは減少します。
キャッシュフロー計算書の作成義務
2013年5月 FP技能士2級 学科 問10より
1.企業の財務諸表には、損益計算書、貸借対照表と並んでキャッシュフロー計算書があり、非上場企業もその作成が義務付けられている。
この選択肢は不適切です。キャッシュフロー計算書は上場企業では作成が義務付けられていますが、非上場企業では作成は義務付けられていません。
会社法上の計算書類に該当しない
2017年1月 FP技能士2級 学科 問40より
2.キャッシュ・フロー計算書は、キャッシュ(現金および現金同等物)を、営業活動、投資活動、財務活動の3つに区分してその収支を計算し、キャッシュの増減を示す会社法上の計算書類の一つである。
この記述は不適切です。
キャッシュフロー計算書の説明はこの通りで正しいのですが、会社法上の計算書類には該当しません。
会社法上の計算書類に含まれるのは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表の4種類となっています。
なお、会社法上の計算書類とは、株式会社が毎年決算において作成しなければならないと定められている書類であり、10年間の保存も義務付けられているものです。
個別注記表と株主資本等変動計算書について
2017年1月 FP技能士2級 学科 問40より
3.個別注記表は、貸借対照表の純資産の部の一会計期間における変動額のうち、主として、株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告するために作成される会社法上の計算書類の一つである。
この記述は不適切です。
「個別注記表」を「株主資本等変動計算書」に直すと正しい文章となります。
この記述は「株主資本等変動計算書」の説明となっています。
株主資本等変動計算書は、ざっくり説明すると、資本金や剰余金などについて1年間の変化をまとめた資料です。
株式会社が毎年決算において作成しなければならないと定められている「計算書類」の一つです。
もう一方の個別注記表とは、他の計算書類である貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書に対する補足事項をまとめたものです。金額の根拠などを補足的に説明する資料となりますが、その内容は細かく定められています。
個別注記表のもっと具体的なことを知りたいという方は、FP2級の試験範囲を超えるものとなりますのでここでの解説は割愛し、下記のリンク先のご紹介に代えさせていただきます。
(簿記の資格を持っているか、会社の経理の実務経験がないと理解しにくいと思います)
・弥生会計のサイトの解説
http://support.yayoi-kk.co.jp/business/faq_Subcontents.html?page_id=1609
・EPSONの会計サイトの解説
https://www.tabisland.ne.jp/kaikei/kakuron_17.htm
貸借対照表の、投資その他の資産
2018年5月 FP技能士2級 学科 問10より
3.(注:貸借対照表に関して)「投資その他の資産」には、長期貸付金や出資金などが計上されている。
この記述は適切です。
ちょっとした会計知識を要求する問題ですね。
まずは、「投資その他の資産」の説明からしていきます。
「投資その他の資産」はそもそも、固定資産の中の内訳項目の一つです。
貸借対照表には固定資産の欄がありますが、その固定資産は次の3つの内訳に分けられます。
- 有形固定資産
- 無形固定資産
- 投資その他の資産
有形固定資産とは、土地や建物、機械設備など、その名の通り形が有る資産です。
無形固定資産とは、その逆で形のないものですが、その種類が決まっており、特許権・商標権などの知的財産権、借地権や営業権、ソフトウェアなどが該当します。
投資その他の資産とは、有形固定資産でも無形固定資産でもない固定資産が該当します。
本問にあるように長期貸付金や出資金は、この「投資その他の資産」に含まれるので、この記述は適切となるのです。
ちなみに、このほかにも、満期保有目的の債券、子会社の株式など、多くの種類があります。
保険分野の問題でよく見かける「資産計上した保険料」も、実はこの「投資その他の資産」に計上されることになっています。
法人の経理
個人事業・法人の経理処理のページにまとめています。
- FP技能士3級と2級の過去問から、難問(試験対策テキストには記述がない問題、多くの人が間違えやすい問題など)を中心に解説しています。
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