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高額療養費制度

所得による自己負担分の区分

自己負担限度額は、収入などの要件により、一般、上位所得者、低所得者の3段階に区分され、それぞれの区分で自己負担限度額に違いがあります。

その収入要件は以下の通りです。

所得者の区分 条件
上位所得者 標準報酬月額が53万円以上の被保険者または被扶養者の世帯
低所得者 市町村民税の非課税世帯
一般 上位所得者、低所得者のいずれでもない世帯

高額療養費の還付手続き

高額療養費で自己負担限度額を超えた分は、後から還付されます。
還付される金額は、所得や年齢(70以上/未満)によって異なります。

還付の申請方法は以下のとおりです。

入院する場合など、事前に高額療養費の還付を受けることがわかっている場合には、病院窓口での支払い金額を自己負担限度額のみで清算する方法があります。(本来は3割負担の金額を病院窓口に支払い、後から自己負担限度額との差額を還付してもらう)
最初に支払う金額が少なくて済み、また還付申請も不要になるので、患者側の金銭的負担、手続き負担も小さくて済みます。

その方法ですが、「限度額適用認定証」を発行してもらい、それを医療機関に提示することで、支払いを自己負担限度額のみに抑えることができます。限度額適用認定証の発行手順は次のとおりです。

なお、70歳以上の人はこの認定証がなくても、自動的に窓口での支払いを自己負担限度額にとどめることができます。ただし、低所得者の区分適用を受ける場合は、認定証が必要です。

高額療養費制度の世帯合算

2011年1月 FP技能士2級 実技(きんざい 個人資産) 問1より

自己負担額の計算

高額療養費制度には、「世帯合算の特例」という制度があります。
自己負担額が一人当たり21000円を超えると、複数の家族との間で医療費を合算し、払い戻しを受けることができます。
例えば、夫が自己負担額6万円(医療費自体は20万円かかっている)、同じく妻の自己負担額も6万円(同じく医療費は20万円かかっている)の場合、合算して

 8万100円+(40万円−26万7000円)×1%=8万1430円

が自己負担の上限となります。そのため、

 6万円+6万円−8万1430円=3万8570円

が払い戻されることになります。

同様に、一つの医療機関で21000円以上の自己負担額が発生した場合には、複数の医療機関で合算をし、払い戻しを受けられます。

詳しくは、下記のページにも解説があります。
http://diamond.jp/articles/-/13608

世帯合算できない場合

家族内であっても、同じ健康保険に加入している家族同士でのみ世帯合算の対象となります。
例えば、以下に該当する場合は、家族間であっても高額療養費の世帯合算を行うことはできません。

多数該当

多数該当とは、多数回該当とも言われることがあります。これは、直近12か月の間において3回以上、高額療養費の支給を受けており、4回目以降の高額療養費の支給を受ける場合のことを指します。
多数該当の場合には、自己負担限度額がさらに減額され、下記の金額となります。

70歳未満の多数回該当の場合:
上位所得者 83,400円
一般 44,400円
低所得者 24,600円

70歳以上の多数回該当の場合:
所得に関係なく44000円

70歳以上の高額療養費の計算

2015年1月 FP技能士2級 実技(FP協会) 問40より

英雄さんの母の正子さん(76歳)の平成26年12月の1ヵ月間における医療費(窓口での自己負担分)のデータ等が下記<資料>のとおりである場合、高額療養費として支給される額(多数回該当は考慮しない)として、正しいものはどれか。
なお、正子さんは後期高齢者医療制度の被保険者であり、窓口で後期高齢者医療被保険者証を提示している。
また、正子さんは平成26年11月に夫が死亡した後、一人で暮らしており、所得区分は「一般」に該当する。

<資料>


[正子さんの医療費(窓口での自己負担分)のデータ]
A内科(外来) :9,000円(保険診療分)
B眼科(外来) :3,000円(保険診療分)
C整形外科(外来):5,000円(保険診療分)
D歯科(外来) :60,000円(このうち、保険診療分は10,000円である。)


[後期高齢者医療制度の高額療養費の計算(「外来」のみの場合)]
個人ごとに外来の1ヵ月分の自己負担額を合算して払戻額を計算する。


[医療費の1ヵ月当たりの自己負担限度額]
所得区分:一般 → 外来(個人単位)12,000円

この問題の答えは「15000円」となります。
なんだかややこしい計算問題のように思いますが、計算に必要な数字と、計算手順は問題文に明記されています。
これをヒントにすれば、次のように答えを求められます。

まず、高額療養費の対象となる医療費の合計額を計算します。問題文に「個人ごとに外来の1ヵ月分の自己負担額を合算」とありますので、この通りに合計額を出します。高額療養費の対象となるのは、保険診療分だけある点に注意すると、次の算式で計算できます。

9000+3000+5000+10000=27000円
※保険診療分だけを足し算した結果です。

続いて、高額療養費として支給される額(すなわち払い戻される額)を計算します。払い戻し高額療養費の自己負担限度額は、12000円と問題文に記載があります。
したがって、この自己負担限度額を超えた分が、支給される(払い戻される)ので、支給される額(払戻額)は次の計算式で求められます。

27000-12000=15000円。

これが、答えとなります。

高額医療・高額介護合算制度

2017年5月 FP技能士2級 実技(FP協会) 問40より

<高額医療・高額介護合算制度の適用について>

同一世帯内で、( エ )における後期高齢者医療の自己負担額と介護保険の利用者負担額の合算額(保険適用分)が、一定の上限額および支給基準額の合計額を超えるとき
※高額療養費等が支給される場合は、その額を差し引いた額が対象

空欄(エ)にあてはまる語句は、「1年間(8月〜翌年7月末)」です。

医療保険には高額療養費という制度が、また介護保険には高額介護サービス費という制度があり、高額な支出をカバーしてくれる仕組みがありますよね。
これを利用してもなお、1年間にかかる医療費と介護費用の合計額がある基準額を超えている世帯に対しては、本問の「高額医療・高額介護合算制度」が適用され、さらに負担が軽減される仕組みになっています。

ただしこの制度を利用するには条件があり、世帯内で医療保険側の自己負担額と、介護保険側の自己負担額をともに支出している必要があります。
つまり、医療のみ、介護のみの負担しかない場合には、高額医療・高額介護合算制度は利用できません。

高額医療・高額介護合算制度では、1年間にかかる医療費と介護費用の合計額が、基準額を超えている世帯への負担を軽減してくれると説明しました。
その基準額は、所得によって決められており、所得が高い人ほど基準額も高くなっています。

なお、本問は後期高齢者医療制度と介護保険制度との組み合わせで説明されています。
一方で、70歳未満の方の医療保険と介護保険制度との組み合わせでも、この高額医療・高額介護合算制度を利用することはできます。

 


 

 

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