保険のセーフティネット
責任準備金
責任準備金とは、生命保険会社が将来の保険料支払いや、満期保険金支払いに備えるために積み立てていくお金のことです。
責任準備金の積み立て方式には、以下の2つがあります。
一つ目が「純保険料方式」で、毎年一定額を積み立てていく方式です。、
二つ目が「チルメル方式」で、初年度は積立額を少なく、年が経つにつれて積立額を増やしていく方式です。
保険会社にとっては、お客様から契約をとったその年に多くの経費がかかります。
そのため、保険会社の経営安定の観点では、チルメル方式のほうが、契約の年の責任準備金を少なくできるため都合がよいといえます。
しかし保険会社の破たんによる影響を小さくするためには、契約の年から多くの責任準備金を積み立てられる純保険料方式のほうが望ましいといえます。
保険会社が破たんしたときには責任準備金の金額の80%〜100%が保護されることになっていますが、その責任準備金は、払い込まれた保険料の合計額よりも少なくなっています。
保険会社破たん時の取り扱い
医療保険の補償
2014年9月 FP技能士2級 学科 問11より
1.医療保険契約は、保険会社破綻時の責任準備金等の70%までが補償される。
この選択肢は不適切です。
医療保険契約の場合、一般の生命保険契約と同じく、責任準備金等の90%までが補償されます。
個人年金保険の補償
2014年9月 FP技能士2級 学科 問11より
2.個人年金保険契約は、保険会社破綻時の責任準備金等の80%までが補償される。
この選択肢は不適切です。
個人年金保険契約の場合、一般の生命保険契約と同じく、責任準備金等の90%までが補償されます。
高利率予定契約の場合
2015年5月 FP技能士2級 学科 問11より
1.生命保険の高予定利率契約は、生命保険契約者保護機構により保険会社破綻時の責任準備金等の90%までが補償される。
この記述は不適切です。
通常の生命保険契約なら、本選択肢の通りです。しかし高予定利率契約の場合は、少し異なります。
高予定利率契約とは、破綻時以前の過去5年間ずっと、基準利率を上回っていた保険契約のことを指します。
高予定利率契約の場合、責任準備金の90%以下の補償率となります。具体的な補償率の計算式は、次の通りです。
90%−{(過去5年間における各年の予定利率−基準利率)の総和÷2}
損害保険契約者保護機構の保障の対象
個人が契約者である損害保険の場合、原則としてすべての契約が損害保険契約者保護機構の補償の対象となります。
法人が契約者である損害保険の場合は、少しルールが細かくなっています。
自賠責保険、自動車保険、傷害保険は、すべての法人が損害保険契約者保護機構の補償の対象となります。
しかし、火災保険、法人向けの損害保険(機械保険、賠償責任保険、労働者災害補償責任保険など)の場合は、小規模な法人(従業員数が20人以下の法人)に限り、損害保険契約者保護機構の補償の対象となります。
損害保険の補償率
2015年5月 FP技能士2級 学科 問11より
4.任意加入の自動車保険契約は、保険会社破綻から3ヵ月を経過した後に保険事故が発生した場合、損害保険契約者保護機構により保険会社破綻時の責任準備金等の80%までが補償される。
この記述は適切です。
責任準備金の80%まで補償されます。ちなみに損害保険の場合は、「責任準備金の80%まで補償」と「保険金額の80%まで補償」は、同じ意味となります。
早期解約控除制度
2012年1月 FP技能士2級 学科 問11より
保険会社が破たんすると、保険契約者保護機構が破たんした保険会社の契約移転を引き受け、責任準備金の一定割合まで補償します。
このような場合に、保険契約移転後の一定期間は、早期解約控除制度が導入されることがあります。
早期解約控除制度とは、解約時の解約返戻金が、通常よりも少ない解約返戻金額となってしまう制度のことです。つまり、保険契約者にとってより不利になる制度と言えます。
保険会社破たん後に大量の保険解約があった場合には、保険契約者保護機構は保険料収入の減少によって資金不足に陥り、保険金を支払うことができない状況が発生しえます。このようなことになるのを防ぐため、一定数の契約者を維持し、可能な限り多くの保険契約を有効に継続させるため、このような早期解約控除制度を導入することがあるのです。
基礎率の変更
2013年1月 FP技能士2級 学科 問11より
3.破綻した保険会社から救済保険会社等に保険契約が移転される場合には、その保険契約に係る保険料等の算定基礎となる基礎率が変更されることがある。
この選択肢は適切です。基礎率とは、予定死亡率、予定利率、予定事業費率のことをまとめて言うときに使う用語です。本選択肢のように、破たんにより別の保険会社に契約が移転される場合は、予定死亡率、予定利率、予定事業費率(まとめて基礎率という)が変更になることがあるのです。その結果、保険契約者が受け取る給付金額、保険金額、年金額などが減少することがあります。
銀行で購入した生命保険
銀行で加入した生命保険商品は、生命保険会社の保険契約者保護機構により保護されます。
預金保険制度では、保護されません。
ちなみに、証券会社以外(銀行など)で購入した投資信託などは、投資者保護基金の保護対象とはなりません。この違いについても理解しておきましょう。
保険契約者保護機構
国外保険会社の、保険契約者保護機構への加入義務
2014年1月 FP技能士2級 学科 問11より
1.日本国内で営業する生命保険会社および損害保険会社であっても、日本国外に本社がある保険会社は、保険契約者保護機構への加入が任意とされている。
この選択肢は不適切です。
2016年1月 FP技能士2級 学科 問11より
1.日本国内で営業する保険会社であっても、その本社が日本国外にある場合は、保険契約者保護機構への加入は義務付けられていない。
この記述は不適切です。
保険契約者保護機構への加入は、国内で営業するすべての生命保険会社、損害保険会社が義務付けられています。国外に本社があっても、日本国内で営業するなら、加入が義務付けられています。
このことは、試験対策テキストにも書いてあることが多いのですが、小さい字で書いてあるなど重要度が低い位置づけになっています。重要度が低いとされていても、このように試験で出題されることがあるので、注意してくださいね。
保護されないもの
少額短期保険は、保険契約者保護機構での保護の対象にはなっていません。
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