自動車保険
それぞれの保険の特徴
FP技能士試験で扱われる自動車保険には、自賠責保険、対人賠償保険、人身傷害補償保険などおおよそ8種類の保険について出題されます。市販の試験対策テキストであっても、それぞれの保険の特徴を網羅的に記載されていないのが現状です。
以下に、8種類の保険の特徴と、特徴の違いが分かるよう一覧表にまとめていますので、参考にしてください。スマートフォンからだと表が崩れてしまうかもしれませんが、PCから閲覧すると見やすくなります。
自賠責 保険 |
対人賠 償保険 |
対物賠 償保険 |
自損事 故保険 |
無保険 車傷害 保険 |
搭乗者 傷害 保険 |
人身傷 害補償 保険 |
車両 保険 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
保険の性質 | 賠償責 任保険 |
賠償責 任保険 |
賠償責 任保険 |
傷害 保険 |
傷害 保険 |
傷害 保険 |
傷害 保険 |
物保険 |
保険金の 算出対象額 |
損害 賠償額 |
損害 賠償額 |
損害 賠償額 |
契約で 定めら れた金額 |
損害 賠償額 |
契約で 定めら れた金額 |
実損額 | 実損額 (時価) |
契約者が死亡、 後遺障害の 場合に保険金 が払われる |
× | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
同乗者が死亡、 後遺障害の 場合に保険金 が払われる |
○ | ○ (※1) |
× | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
事故を起こした 時、被害者が 死亡、けがの 場合に保険金が 払われる |
○ | ○ (※1) |
× | × | × | × | × | × |
契約者所有の車 以外の物への 損害に対し、 保険金が 支払われる |
× | × | ○ (※2) |
× | × | × | × | × |
契約者所有の 車の損害に対し 保険金が 支払われる |
× | × | × | × | × | × | × | ○ |
契約者に過失 割合がある場合 保険金が減額 される |
× | × | × | × | ○ | ○ | × | × |
契約者の相手 側(被害者)に 過失割合が ある場合に 保険金が 減額される |
○ (※3) |
○ | ○ | × | × | × | × | ○ (※4) |
契約者が酒酔い 運転、無免許 運転の場合に 保険金が 払われる |
○ | ○ | ○ | × (※5) |
× (※5) |
× (※5) |
× (※5) |
× |
※1:一般的には保険金が支払われますが、同乗者(事故の被害者)が、運転手の家族の場合は払われません。それ以外の他人の場合には支払われます。
※2:一般的には保険金が支払われますが、契約者の配偶者や子供などの親族の所有物に対する損害は補償されません。
※3:事故被害者の過失割合が7割以上ある場合には減額されます。
※4:相手側である事故被害者に過失割合がある場合、被害者が加入の保険から受け取る保険金が優先的に車両の修理などに充当されます。その結果、相手から受け取った保険金の金額分、車両保険から受け取れる保険金は減額されます。しかしその場合でも、結果的に車の実損額は補償されることになり、損をすることはありません。
※5:一般的には保険金は支払われません。しかし保険契約内容によっては、本人ではなく同乗者が死亡、後遺障害になった場合には、保険金が支払われるケースがあります。ただしその場合、保険金額が減額される場合があります。
自動車賠償責任保険(自賠責保険)
自賠責保険が優先して支払われる
自動車事故が発生した場合、原則として自賠責保険から優先して保険金が支払われます。
民間の自動車保険(上記の表の8種類の保険)は、自賠責保険の保険金額を超えた部分について、また自賠責保険では対象となっていない部分について、保険金が支払われます。
自賠責保険の被保険者の定義
2013年9月 FP技能士2級 実技(FP協会) 問14より
(イ)自賠責保険の被保険者は、自動車の保有者と運転者である。
この記述は正しいです。これをそのまま暗記すれば試験対策上はよいのですが、自動車の「保有者」と「運転者」の用語にはそれぞれ定義がありますので、それも合わせて解説します。
自賠責保険でいう「保有者」とは、いわゆる自動車の持ち主です。個人で自動車を保有しているときには、その持ち主が保有者となります。
一方の「運転者」とは、法人が所有する車を運転するときのドライバーと考えてください。法人所有の車の場合、その自動車の保有者は法人ですが、運転者はその社員と考えればよいでしょう。ですので、社員が事故を起こした場合であっても、自賠責保険で保険が下りるわけです。
「家族」が補償対象に含まれないケース
2019年5月 FP技能士2級 学科 問16より
1.自動車を被保険者の父の家の車庫に入れるとき、誤って門柱を損傷した場合、その損害は対物賠償保険の補償の対象となる。
この記述は不適切です。
対物倍賞保険においては、契約者・契約者の配偶者・契約者の親族の所有物に対する損害は補償されません。
補償される場合と補償されない場合が細かく規定されている点を、理解しておきましょう。
同様に、対人賠償責任保険において、契約者、契約者の親族に対してケガ・死亡させた場合も、補償の対象にはなりません。
対人賠償保険の保険金額の上限
2013年9月 FP技能士2級 学科 問16より
3.自動車保険の対人賠償保険の保険金額は、被害者1名につき2億円が上限である。
選択肢3は不適切です。対人賠償保険の制度としては保険金額の上限はありません。ただし、保険商品ごとに、保険契約で上限を定めることはできます。
ちなみに、無保険車傷害補償保険では、保険金額の上限は2億円となっています。
人身傷害補償保険と搭乗者傷害補償保険の違い
2013年1月 FP技能士3級 学科 問10より
2013年1月 FP技能士2級 学科 問15より
人身傷害補償保険は、搭乗者傷害補償保険よりもカバー範囲の広い保険です。搭乗者傷害補償保険の場合は、自身の過失分を差し引いた額が支払われますが、人身傷害補償保険は過失割合に関係なく補償されるという違いがあります。
支払われる保険金は、搭乗者傷害補償保険の場合は契約で定められた一定の金額です。一方で人身傷害補償保険は、実損額の補償となります。この違いも理解しておきましょう。
ちなみに、人身傷害補償保険は実損額を査定する必要があるため、保険金が支払われるまで少し時間がかかるというデメリットもあります。一方で搭乗者傷害補償保険は、一定額の保険金と契約で定めているため、支払いが素早いという特徴があります。
自損事故保険
自損事故保険は、契約者である運転手の過失割合が100%の場合にも、保険金支払いの対象となります。
車両保険
洪水、高潮による損害
2013年5月 FP技能士2級 学科 問16より
2.一般条件の車両保険では、洪水・高潮により自動車に損害が生じた場合、保険金支払いの対象となる。
この選択肢は適切です。洪水や高潮であれば、一般の車両保険で保険金支払いの対象となります。しかし地震に起因する津波の場合は、支払いの対象とはなりません。この場合をも補償するためには、別途地震に関する特約を附帯する必要があります。
自損事故の補償
2015年5月 FP技能士3級 学科 問9より
自動車保険の車両保険(一般条件)では,自宅の敷地内の駐車場で運転操作を誤って自損事故を起こし、被保険自動車が被った損害は,補償の対象とならない。
この記述は誤りです。
自損事故の場合であっても、車両保険(一般条件)では補償の対象となります。
ちなみに、一般条件ではなく、エコノミー車両保険などと呼ばれるタイプでは、自損事故による被保険自動車の損害は補償の対象とはなりません。その分、一般条件よりも保険料は安く設定されています。
リスク細分型自動車保険
2016年9月 FP技能士3級 学科 問9より
リスク細分型自動車保険は、性別、年齢、運転歴、地域、使用目的、年間走行距離その他の属性によって保険料を算定するもので、一般に、保険料を比較すると、通勤使用よりもレジャー使用のほうが割高になる。
この記述は不適切です。
通勤使用よりも、レジャー使用のほうが「割安」になります。
自動車保険においては、レジャー使用⇒通勤使用⇒業務使用、の順に保険料が高くなります。
これは、車の利用頻度に基づいて判断されます。
例えば、週に5日以上運転するが業務目的での利用でない場合は「通勤使用」とみなして自動車保険を契約する必要がある、ということです。
車の利用頻度が高いほど、事故にあう確率も高くなります。
それを保険料に反映している、というわけです。
ファミリーバイク特約について
2018年9月 FP技能士2級 実技(FP協会) 問13より
(エ)(注:ファミリーバイク特約が付加された自動車保険に関して)杉山さんが所有する原動機付自転車(50cc)を杉山さんの妻(45歳)が運転し、事故を起こして他人にケガを負わせてしまった場合、補償の対象となる。
この記述は適切です。
原動機付自転車(以下、原付と略します)による事故は、一般的な自動車保険では補償されません。
ファミリーバイク特約を付加していれば、原付による対人事故・対物事故も補償されます。また、記名被保険者とその家族が起こした原付の事故も、補償の対象となります。
補償対象となる家族は、下記の通り規定されていることが一般的です。
- 記名被保険者
- 記名被保険者の配偶者
- 記名被保険者の同居の親族(子や両親、など)
- 記名被保険者の別居の未婚の子
また、他人から借りた原付の事故も、補償対象となることが一般的です。
ノンフリート契約の割引率
2018年9月 FP技能士2級 実技(きんざい損保) 問6より
2 「新たに自動車を購入し、新規で自動車保険に加入する場合、ノンフリート等級は6等級(S)が適用され、運転者の年齢条件に応じた割引率となります。運転者の年齢を問わず補償する契約の場合、9%の割引率が適用されます」
この記述は不適切です。
6等級の場合の割引率は、運転者の年齢条件に応じて、次の通りとなっています。
年齢を問わず補償:28%割増
21歳以上補償:3%割増
26歳以上補償:9%割引
これは、自動車保険の実務に関わっていないと答えられないように思います。ここまではさすがにFP試験テキストには載っていないでしょう。
等級ダウンの種類について
2017年9月 FP技能士2級 実技(損保顧客) 問6より
3.「保険事故(対物賠償)があった後に自動車保険を更新する場合、等級は3等級下がり、更新後の保険料は高くなります。ただし、自然災害などにより車両保険金のみを受け取った場合は、いわゆるノーカウント事故に該当するため、等級は変わらず、保険料は据置きになります」
この記述は不適切です。
自然災害などにより車両保険金のみを受け取った場合は、ノーカウント事故ではなく「1等級ダウン事故」となり、保険料は上がることになります。
自動車事故による等級変動について、少し詳しく説明します。
自動車保険において、事故の種類には3等級ダウン事故、1等級ダウン事故、ノーカウント事故、の3種類があります。
ノーカウント事故は、等級が下がらない事故の種類です。
ノーカウント事故の場合、更新後には1等級上がり、保険料は安くなります。
ノーカウント事故に該当するのは、主に次のケースです。
・人身傷害保険、搭乗者傷害保険による保険金が支払われた
・弁護士費用特約、個人賠償責任特約による保険金が支払われた
ただし、他に1等級ダウン事故、3等級ダウン事故に該当する事故がないことが条件です。
1等級ダウン事故の場合、更新後に1等級だけ下がります。
結果、更新後の保険料は上がります。
1等級ダウン事故に該当するのは、主に次のケースです。
・盗難を原因として、車両保険の保険金が支払われた
・自然災害を原因として、車両保険の保険金が支払われた
・偶然かつ外来の事故により(契約者に責任はない)、車両が破損し車両保険を使った
・ほかに3等級ダウン事故に該当する事故がない
上記以外の場合は、3等級ダウン事故となります。
もちろん、更新後の保険料は大きく上がってしまいます。
自ら起こした事故で車両保険を使った場合も、3等級ダウン事故となります。
ちなみに、昔は「等級据え置き事故」という種類がありましたが、現在それらはすべて1等級ダウン事故として取り扱われています。
契約者と保険金受取人が異なる場合の課税
身体の傷害や疾病に対して支払われる医療保険金や入院給付金、後遺障害の保険金などは、非課税です。
これに関しては、契約者と保険金受取人が異なる場合も、非課税です。
一方、死亡保険金については、生命保険の課税と同じルールが適用されます。したがって、契約者と保険金受取人が異なる場合は、相続税(契約者=被保険者)または贈与税(契約者≠被保険者)が課税されます。
免許失効時の保険金支払
2019年5月 FP技能士2級 学科 問16より
3.運転免許失効中の被保険者が自動車を運転中に交通事故で他人を死傷させてしまった場合、その損害は対人賠償保険の補償の対象となる。
この記述は適切です。
運転免許失効中に自動車事故により相手方に損害を負わせた場合であっても、自賠責保険の有効期限内であれば、自賠責保険から保険金が支払われます。
同様に、民間自動車保険の対人賠償保険でも、上記のような場合には保険金は支払われます。
- FP技能士3級と2級の過去問から、難問(試験対策テキストには記述がない問題、多くの人が間違えやすい問題など)を中心に解説しています。
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