土地区画整理法
2012年9月 FP技能士2級 学科 問46より
土地区画整理法に関する出題は、めったにありません。ただ、大規模災害の復興で活用されることのある法律であることから、大きな地震などの災害が起こった少し後にFP技能士試験で出題される傾向があるようです。
土地区画整理法は、出題頻度は極めて低いうえに、市販FPテキストでも解説がほとんどないか、あっても概要程度です。土地区画整理法の問題が不正解でも、他の問題に正解して合格ラインを越えられればそれで充分です。
本ページでは、FP技能士試験で正解を導けることを目指し、土地区画整理法について簡単にまとめています。より完璧を目指したい方は、このページで内容を理解してください。
土地区画整理事業とは
土地区画整理事業とは、一筆の土地だけではなく、「地域」「地区」として人々に認識されるような広い範囲にわたり、そこに存在する土地の区画を変更していく(整理する)事業のことです。
たとえば、駅前の土地開発、自治体主導で行われる街の再開発、大規模災害の復興の場合に、この土地区画整理事業として行われています。
この土地区画整理事業に関してさまざまなことを定めている法律が、土地区画整理法です。
土地区画整理事業について、下記のサイトにある程度詳しく書かれていますので、まずはこちらの内容に目を通していただき、概要を理解してください。
国土交通省 http://www.mlit.go.jp/crd/city/sigaiti/shuhou/kukakuseiri/kukakuseiri01.htm
東京都都市整備局 http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/tk_seiri.htm
上記サイトにある図などを含めて概要を理解したうえで、さらに以下の内容を理解すると、問題に正解できる知識が得られます。
土地区画整理事業に関する用語
施行者
土地区画整理事業を行う立場にあり、土地区画整理事業を推進する立場の人または組織です。
施行者になれるのは、個人(単独または複数人)、土地区画整理組合、区画整理会社、都道府県、市町村、国土交通大臣、独立行政法人都市再生機構などです。
実務上は、地域住民が設立した土地区画整理組合が施行者となる場合が多いようです。
換地
上記のサイトで図とともに解説されていますが、土地区画整理事業の前と後とで、一筆の土地が再配置されます。再配置後によって、地主が保していた土地の場所、形状、地質が変化することがありますが、再配置後の宅地のことを換地といいます。
換地として交付される土地は、原則として従前の宅地と同様の条件(位置、地積、地質などの環境)であることとなっています。
従前の宅地
土地区画整理事業が行われる前の宅地のことを指します。
土地区画整理事業が行われた後の宅地である換地と、逆の意味を持つ言葉です。
換地処分
土地区画整理事業が完了することを意味します。この時を厳密には「換地処分の公告があった時」といいます。
換地処分の公告の翌日から、従前の宅地に存在していた所有権などの権利は、正式に、新たな土地(換地)に移動することになります。
土地区画整理事業に伴う宅地の権利については、まとめて後述しています。
減歩
「げんぷ」と読みます。土地区画整理事業に伴い、従前の宅地の一部を他へ提供することを意味します。つまり、地主は事実上、土地の一部を失うこととなります。
複数の地主から土地の一部を提供(減歩)してもらい、まとまった土地面積を確保するために行われます。
減歩を行う必要性として、次のようなことが挙げられます。
- 新しく公共施設を立てるための土地を確保する
- まとまった土地を売却するなどして、土地区画整理事業の事業資金を生み出す
減歩により土地面積は小さくなっても、一般的には都市区画整理事業完了後は土地の価格の上昇が見込めるため、経済的損失は生じないとされています。
保留地
減歩によって確保した、事業資金を生み出すために売却する土地のことです。
保留地の所有権は、施行者にあります。
ただし保留地を第三者に売却(譲渡)した場合は、譲渡先の相手が該当宅地(すなわち保留地)の所有権を持ちます。
仮換地
土地区画整理事業が完了するまで(換地処分が公告されるまで)には相当の期間を要するのが一般的です。そのため、換地処分前に従前の土地にとって代わる土地を交付する場合も多く、それを仮換地といいます。
仮換地は多くの場合、換地予定地が交付されますが、それ以外の土地であってもかまいません。その場合は、換地処分があるまでの間だけ、仮換地として交付された土地を使用することになります。
なお、仮換地を指定するのは、施行者です。
清算金
換地として交付される土地は、原則として従前の宅地と同様の条件(位置、地積、地質などの環境)であることが原則です。しかしどうしてもこの原則通りに事業を進められない場合もあり、従前の土地と換地処分後の土地とで経済的価値が大きく変動する場合に、調整の意味でやり取りされるお金を、清算金と言います。
土地区画整理事業によって、従前の土地と比較して不利益を受ける地主には清算金が支払われ、逆に利益が得られる地主は清算金を支払う立場になります。
この清算金の徴収・交付を行うのは施行者であり、換地処分後に遅滞なく行うことになっています。
従前の宅地と換地における権利
一般的には、土地区画整理事業に伴って地主が使用する土地は、従前の宅地→仮換地→換地 となります。前述のとおり、仮換地と換地が同一の土地であることも多いです。
この過程において、土地の権利関係は、次のようになります。
土地区画整理事業前
登記されている土地:従前の土地
使用・収益できる土地:従前の土地
仮換地後
登記されている土地:従前の土地
使用・収益できる土地:仮換地(従前の土地は使用・収益してはならない)
従前の土地を使用・収益できなくなると、地主は経済的不利益をこうむってしまいますが、それを防ぐための仕組みが仮換地になるのです。地主は従前の土地に代わり、仮換地を使用収益することになります。
登記されている土地は従前の土地のままであるため、地主は従前の土地を所有したままの状態であると法律上みなされます。仮換地の所有権を有しているわけではなく、あくまで一時的に仮換地の使用許可を与えられているということになります。
ということは、仮換地の所有権を持つ人が別に存在しているということでもあります。しかしその仮換地の地主(所有権を有する人)は、その土地を使用収益できなくなります。
換地処分後
登記されている土地:換地
使用・収益できる土地:換地
換地処分により、土地の権利が従前の土地から換地に完全に切り替わることになります。
従前の土地を使用収益することはできません。また、仮換地と換地が異なる場合においては、仮換地も使用・収益することはできなくなります。
仮換地を使用収益中における土地の売買(譲渡)
仮換地を使用・就役中であっても、土地の売買は可能です。
売買の対象は、登記されている土地(すなわち従前の土地)となります。所有権移転登記や抵当権設定登記も、従前の土地に対して行います。
なお、譲渡契約が成立したときの新たな宅地所有者は、やはり従前の土地を使用・収益することはできず、仮換地を使用・収益することになります。
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