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独立FPに聞いてみよう!FP資格の活かし方(佐藤 麻衣子さん)

ファイナンシャル・プランナーの資格を取得したあと、あなたはどうしますか?転職?独立?それとも?
さまざまな目的や経験を経てFP資格を取得した方のその後をインタビューします。
初回は、ウェルス労務管理事務所代表の佐藤麻衣子さんです。


佐藤麻衣子さん

今回ご紹介するFP

佐藤 麻衣子(さとう・まいこ)

1981年生まれ。神奈川県出身。大学卒業後、上場企業でIR(株主向け広報)業務を担当。信託銀行に転職後、CFP 、1級FP資格を取得。
退職後、税理士事務所、社会保険労務士法人等に勤務し、社会保険労務士試験に合格。2015年に独立し、ウェルス労務管理事務所を開業。
企業向けに確定拠出年金やライフプラン研修、人事労務コンサルティングなどを行う。著書に「30代のための年金とお金のことがすごくよくわかって不安がなくなる本」(日本実業出版社)。

FP勉強会取材メンバー

東野 知聡(ひがしの・ちさと)

1級FPの会社員。資格を取得したものの、仕事で直接FPの知識を使うことはないためどう活かしていこうか模索中。学んだことは日常生活でどのように活かせるのか、独立FPがどんな仕事なのかに興味があり、本取材に参画。

高野 具子(たかの・ともこ)

40社扱う来店型保険相談ショップの元店長。現在は、保険や特定の金融商品を扱わない独立FP。今回佐藤麻衣子さんに取材を依頼したのは、佐藤さんが手数料ビジネスではなくコンサルティングビジネスで成功されていることと、女性の新たな働き方を開拓されていることに共感したため。


FP勉強会取材メンバーの東野知聡(左)と高野具子(右)

 

 

電話口の涙 思い出して

――佐藤麻衣子さんは、会社員として働きながらFP資格を取得しました。FP資格取得のための勉強はどのようにしていましたか。

佐藤:専門スクールと独学の2つの選択肢があると思いますが、私はどちらも経験しました。
最初は専門スクールに通い、AFPを取得しました。その後、信託銀行に転職してから育児休暇を取得し、「休んでいる間に周囲から置いていかれてしまうのでは」という焦りもあり、CFP受検を決意しました。この時は、テキストと問題集を購入して独学で学びました。
独学はモチベーションを保つことが難しいと言われます。ですが、お客様と窓口で接した経験が私を支えてくれました。リーマンショックがあった頃、電話口で泣きながら話すお客様を前に「自分のせいでお客様の大事なお金が減ってしまったのではないか」と悩んだり、うまくアドバイスができず沈黙したり。そんな苦い思い出を振り返り、このようなことを繰り返さないためにも頑張ろうと、試験勉強を乗り越えました。

多様化するライフプラン

――資格勉強の知識と、実務とのギャップはありますか。

佐藤:合格を得るための知識と現実問題の違いですね。2008年にAFPを取得したのですが、課題で作ったライフプランのことが、今でも忘れられません。「子どもを育て、右肩あがりで給料が増え、退職金が2,000万円。十分な年金をもらい75歳で亡くなる。」という、ライフプランを作らなくても困らない、理想的なモデルでした。老後の家計相談では、総務省の家計調査年報に基づいた、高齢者の生活費の1カ月平均である26万円がよく登場します。でも、「そんな人は実際にいるのか?」と思いました。そのようなライフプランを作っても、それは自分の実態に合っていないとお客様が否定的な気持ちになってしまいます。
本来のライフプランは、もっと込み入っていて、持病や介護、ローンなど、誰しもが個別の事情をお持ちです。多様化した現代では、平均値はさほど参考になりません。個々人の価値観や実情に合わせたライフプラン設計が重要です。

――相談にあたっては、どんなことが重要でしょうか。

佐藤:事例の引き出しでしょうか。お客様の悩みを聞いていると、自分が持っている知識をつい話しがちです。しかし、現実の成功事例を知りたいお客様も多くいます。「こんな人もいるんですよ」「こんな働き方もありますよ」と事例を共有したうえでお金の話に寄り添わないと、前向きな気持ちにはなってもらえません。

社員に優しい制度が会社を救う

――2015年に独立されましたが、会社員の頃とくらべ、変わったことはありますか。

佐藤:独立して4年目になるのですが、生活のスタイルが大きく変わりました。独立前、信託銀行で働いていた頃は、販売額や手数料の達成がいつも頭の片隅にありました。正直なところ、自分に違和感があったのかもしれません。そのせいか、イライラしてお酒を飲みに行ったり、服を買ったりしていました。出産のとき、実はちゃんと貯金できていませんでした。
独立後は、自分に正直に生きています。自分がおかしいと思うことはやらず、いいなと思うことをやっています。会社員時代と比べれば収入が少ない時期もありましたが、自分に正直になったら仕事や子育てで心が満たされ、昔のようにお酒や洋服にお金を使わなくなりました。

――独立してよかったと思うことは何でしょうか。

佐藤:やりがいを直接感じられることです。企業向けに確定拠出年金の導入研修をしているのですが、合わせて福利厚生制度、さらには人事制度まで踏み込んだ提案もしています。「今、働いている人の生活設計と会社の制度が合っていない」「この制度を変えることで、もっと社員が生き生きと働ける」と、FPで学んだライフプランの考え方とともに提示すると、論理的で説得力のある説明ができます。
例えば、在宅勤務といった新しい働き方を設けることで、仕事への意欲は高いものの、何らかの事情で通勤が困難な社員を失わずに済むかもしれません。これは、会社にとってメリットのある話です。ですが、メリットは会社だけにあるのではありません。子育てや介護をしながら働く社員にとって優しい制度を考えることは、社員のライフプランを救うことにもなるのです。このように、会社にも社員の方にも貢献できる今の仕事はやりがいに満ちています。

お得感を可視化する

――お金をいただいてFPの知識を活用する上で、難しいことや、工夫していることはありますか。

佐藤:今は情報が簡単に得られるので、情報に価値を見いだしてもらうことがとても難しいと感じます。従来のようにライフプランを組み立て、保障額がいくらで、いくらの家が買えるといった提案をするだけでは到底お金はもらえません。お客様にあった新しいサービスを提案したり、思いを受け止めて精神的に支えたりと、一歩進んだ寄り添い方が求められていると思います。
私は、提案を実行すると「お得になる」ということを数字で可視化できるようにしています。お客様にとっても、数字で見えないと相談した価値が実感できません。相談業務は時間単価がいくらと考えがちですが、FP自らがその助言の価値に誇りを持ち、時間単価ではなく価値に対して支払ってもらう仕組みづくりが大切だと思います。例えば、出費の削減額あるいは得した金額の10%を頂戴する報酬体系などです。

得意分野とかけ算を

――最後にFPの資格を取得した方にメッセージをお願いします。

佐藤:どういう人が困っていて、自分はどういう形で人の役に立つことができるのだろうと考えてみてはいかがでしょうか。やってみたい分野とFPの知識とのかけ算ができると理想的ですね。「介護とFP」「起業とFP」「システムとFP」など、かけ合わせることでニーズがさらに広がりそうです。
私は「働き方とFP」というかけ算を意識しています。2018年に、30代に向けた年金の仕組みと働き方についての本を書きました。その中では、これからの世の中で考えられるタイプ別ライフプランをまとめました。私には、30代の方が直面している不安を解決したいという思いがあります。具体的には、就職氷河期を経験した世代の働き方、結婚、育児、介護の問題などです。私は「働くこと」と「ライフプラン」の両方からアプローチし、誰もが安心して前向きに生きるための手助けをしていきたいです。

 

編集後記

記念すべき取材第1回は、佐藤麻衣子さんでした。お忙しい中貴重なお時間をいただきました佐藤さんに心より感謝いたします。きさくで丁寧に受け答えされる姿と、随所に見せてくださる満面の笑みがとても印象的でした。佐藤さんは、豊かな人間性、社会的課題への高い意識、そして強い責任感をお持ちで、多様なお客様の課題解決のためにFPの知識を活用されていました。
第2回の取材は、今この記事をご覧の皆様と一緒に楽しく取材できればと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

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