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海外勤務・海外移住

海外勤務の会社員に対する社会保険の取り扱い

グローバル時代などと言われるようになり、海外出張や転職などで、日本国外で仕事をする人も増えてきています。

ところで、外国で働くようになったら、今の社会保険はどうなってしまうのでしょうか?
この点については、ファイナンシャルプランナーの資格試験ではほとんど出題がされません。
この質問に答えられるようになるためには、追加で学習が必要です。

下記に、海外勤務時の社会保険について、簡単にまとめています。より細かい点についてもっと知りたい場合には、専門書や関連サイトなどでも学習してみてください。

健康保険

転勤や出向などで、国内の会社と雇用維持関係が継続している場合、原則として海外勤務時も健康保険は適用されます。
ただし海外でかかった医療費は3割負担にはならず、医療費はいったん全額を支払わなければなりません。後日、事業主を経由して還付を受けるという手続きになります。還付を受けられる金額は、国内で同様の医療を受けたとしてそれにかかる点数から算出された医療費の7割です。すなわち国内医療費の3割の自己負担を差し引いた金額が還付されます。したがって、医療費の高い国で医療を受けた場合、国内で受けた時より自己負担額は高くなる場合があるので注意が必要です。

一方、賃金が雇用元の国内会社から支払われず、出向先の外国企業から全額支払われる場合は、健康保険は適用されません。転籍や転職などで海外の会社と雇用関係を結んだ場合も、健康保険は適用されません。
この場合、その国で公的な医療保険制度があれば、それに加入することもあります(国ごとに制度が異なります)。
注意点としては、日本の健康保険が適用されなくなるため、健康保険の被扶養者への対策が必要になります。被扶養者であった人は、任意継続被保険者制度を利用して被扶養者を継続するか、改めて国民健康保険に加入する必要があります。

厚生年金保険

転勤や出向などで、国内の会社と雇用維持関係が継続している場合、原則として海外勤務時も厚生年金保険の被保険者となります。この場合、国内の会社から支払われる賃金を標準報酬月額として扱います。そのため、国内会社から支払われる賃金が少なく、転勤先の海外の会社から多くの賃金が支払われる場合、支払う年金保険料は少なくなりますが、将来受け取る厚生年金の受給額も少なくなります。

一方、賃金が雇用元の国内会社から支払われず、出向先から全額支払われる場合は、厚生年金保険の資格を喪失します。転籍や転職などで海外の会社と雇用関係を結んだ場合も、資格を喪失します。
資格を喪失した場合は、国民年金の第2号被保険者とはならなくなります。
その配偶者が国民年金の第3号被保険者であれば、第1号被保険者となり保険料負担が発生します。

海外で勤務した場合、その国の年金制度への加入が必要な場合があります。ただしその国と日本との間で結ばれている社会保障協定の規定にも影響をうけます。

介護保険

海外で勤務をした場合でも、40歳以上の人であれば原則として保険料は支払います。ただし、日本に住民票を残さない形で海外で勤務をする場合、介護保険適用除外該当届を事業主経由で提出すれば、介護保険料の支払いは免除されます。

雇用保険

転勤や出向などで、国内の会社と雇用維持関係が継続している場合、原則として海外勤務時も雇用保険は適用されます。この場合、国内の会社から支払われる賃金から、雇用保険の保険料が計算され、天引きされます。
そのため、国内会社から支払われる賃金が少なく、転記先の海外の会社から多くの賃金が支払われる場合、支払う保険料は少なくなります。

労災保険

国内で業務に従事している場合にのみ適用されるため、海外で業務に従事している間は労働保険は適用されません。ただし、海外派遣者の特別加入制度を利用すれば、適用されます。

海外移住(ロングステイ)の注意点

新興国物価上昇を考慮する

海外ロングステイ(海外移住)の魅力の一つとして、物価が安い国で暮らせるという点があります。
ただ、これには一つ注意すべき点があります。

移住したその時には物価が安くても、経済が勢いよく発展している新興国などの場合、徐々に物価が上昇していくリスクがあります。したがって、その国の物価状況を随時把握することが大切です。
物価がある一定以上アップするような場合には、物価の安さによる恩恵を受けられなくなってしまいます。その時のこともあらかじめ考えたうえで、ロングステイの計画を立てるとよいです。

海外移住者の年金受け取り方法

日本の公的年金は、海外で開設した本人名義の口座に送金してもらうことが可能です。
年金事務所で所定の用紙に必要事項を記入し、海外で開いた口座の内容がわかる書面を提出すればOKです。海外送金手数料は不要であり、海外送金の手間も省けるメリットがあります。

ロングステイ中の留守宅管理

ロングステイをする場合には、長期間自宅を開けなくてはならない場合があります。
そのときには、長期間留守中の自宅をどのように管理すべきかを検討しなくてはなりません。

新聞を購読している場合は、配達停止または購読中止の手続きを取りましょう。

郵便物は、転送届を出して対応できますが、転送届による転送期間は1年が限度です。1年以上不在にする場合は、知人や賃貸物件管理人に保管してもらうなど、別途留守宅の郵便物管理を検討しなければなりません。

公共料金は、留守宅であっても基本料金は発生します。その支払いのため、口座振替を利用すべきでしょう。

また、建物が傷まないよう、住まいの風通しはたびたびおこなう必要があります。庭の手入れも必要ですし、ペットの管理なども必要です。このように、留守宅の面倒を全面的に見る必要がありますので、この点もしっかりと対策を取らねばなりません。

賃貸物件の場合、長期の不在は契約解除要件に該当する場合もあります。その場合は、退去の手続きを取らねばならないこともあるので注意が必要です。

生活費

生活費は比較的低コストで抑えることはできます。しかし、日本人らしい快適な暮らしを希望するほど、結局は高い生活コストとなり、日本で暮らすのと同等の金額が必要になる場合もあります。

海外での銀行口座開設

口座は開設すればよいというものではありません。実際の利便性を考慮して、口座開設に臨むべきです。
口座開設にあたっては、その銀行の評判を確認したり、ATM所在地や支店所在地を把握して入出金の利便性を確認し、サービス内容、金利なども確認すべきです。
銀行によっては最低預入残高が規定されており、その金額を下回ると、口座維持手数料等が必要になる場合があります。

日本への納税

海外居住者でも、日本への納税は必要です。(所得税、固定資産税など)
長期不在時には、納税代理人を選出して納税義務を代行してもらう必要がありますが、口座振替納税を選択すれば納税作業自体は楽になります。

海外での住宅

賃貸物件を借りる場合

住宅を借りる場合は、日本の時以上に物件に関する調査を入念にしたほうがよいです。
家具の有無や、水道光熱費が賃料に含まれるのかどうか、退去時に補償金が全額戻るのかなど、さまざまな条件を確認することが大切です。
賃貸物件の相場を知り、賃料の妥当性を判断することも重要です。
日本の商習慣とは異なる環境の中での契約となるので、物件のことを調べずに借りてしまうと、あとで損をする結果となりかねません。

購入する場合

不動産の購入はややリスクが高いです。
日本のような登記制度はありませんし、不動産相続や税に関する法律は国によって異なります。海外での相続の手続きには現地言語での書類を記入する必要があります。場合によっては、海外の弁護士を通した手続きが必要になるなど、非常に煩雑な作業になります。
このようなことが面倒なら、海外の不動産購入は避け、賃貸で利用を検討した方がよいでしょう。

また、海外で不動産を買うと、あとで売りづらい状況となり、実質的に資産化できない場合もあり得ます。海外不動産を購入するなら、日本との制度の違いを十分理解してから購入すべきです。

海外に移住した時に、変わる税金の扱い

特定口座

非居住者になると、特定口座の利用ができなくなります。

海外勤務の時、給与に所得税がかかるのか

日本に本社がある会社の海外支店の勤務となり、所得税法上の非居住者に該当する場合、その給与が日本国内に送金されず現地で受けとるのであれば、国外源泉所得となるため、その給与に所得税は課税されません。

ただ、これは従業員として給与を受け取った場合です。
同様のケースで役員がもらった給与の場合は、国内源泉所得とみなされ、所得税が課税されます。

常に世界中を移動している人の場合

たとえば、漁船やタンカーの乗組員、航空機のパイロットなどの人の場合です。こういった職業の人の住所が国内にあるかどうかは、以下のような基準で判定します。

・その人が勤務時間外に滞在する場所が、日本国内にあるかどうか。
仕事をしていない休日などに、日本に滞在している状況が多ければ、日本に住所があるとみなされるでしょう。

・その人の配偶者や生計を一にする親族が、日本に居住しているかどうか。
たとえば、その職業についている限り世界中を移動し続けるような人の場合で、特定の国に頻繁に立ち寄るようなこともない場合です。
この場合は、その職業を退職したときに帰るべき家(家族が住んでいる場所)が日本にあれば、日本に住所があるとみなされるようです。
実際には様々な観点から総合的に判断されることになりますが、以上の理由から、配偶者や生計一の親族が日本に居住していれば、推論的に日本に住所があるとみなされるようです。

年の途中で海外に移住した場合

年の途中で居住区分(居住者・非居住者の区分)が変わる場合、それぞれの期間の区分に応じて所得税が課税されます。
たとえば1/1〜10/31まで日本の居住者であり、11/1〜12/31まで非居住者である場合です。
この場合には、1/1〜10/31に発生した所得に関しては、居住者として所得税が課税されます。一方で11/1〜12/31に発生した所得に関しては、非居住者として所得税が課税されることになります。

 

 

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