資産運用アドバイスの参考情報
資産運用の必要性を顧客に理解させるには
顧客へのFP相談の場面や、身近な人たちからの相談で、資産運用のお話が出ることがあります。
その時に、株や国債などの金融商品の特徴や運用方法について話をするかと思いますが、なぜ資産運用をする必要があるのか、その点について相手に理解してもらうことも大切です。
資産運用は、それ自体を目的とするものではなく、何かの目的を達成するために行う「手段」であるからです。
たとえば、住宅購入、子供の教育、老後生活など、人生には大きなお金がまとまって必要となる場面があります。
このようなまとまった多額のお金を、その時に突如にして準備することはできませんから、前もって計画的に準備が必要です。
預貯金で貯蓄をしていくのもよいですが、もう少し効率よく目標の額をためる手段として、資産運用をしましょう、というお話になるかと思います。
まずはこのように、資産運用をする目的を明確に顧客に理解してもらうことが重要です。
目的を理解した後に、株や投資信託など金融商品の話題を出して行くのが望ましいです。
資産運用の必要性が理解できても、本当にうまくいくのか、大きく損をしそうなど、顧客が不安に感じることもあります。
その不安は、適切な説明のもとで、解消してあげることが大切です。
投資という資産運用手段は、メリットもあればデメリット(特に、元本割れになること)もあります。
投資のデメリットを避けるためにはどうすればよいか、どのような知識を持っておくべきか、という点に踏み込んで説明も必要です。
資産運用の必要性と、資産運用のデメリットやその解消法について納得してもらったうえで、顧客が資産運用に踏み切ることが重要です。
相談相手が投資初心者であれば、なおさら大切なことです。
この観点を、資産運用のアドバイスをするときに、参考にしていただければと思います。
損した資産は売るべき? 買うべき?
リスク管理の基本的な考え方として、「損をした資産を売却する」があります。
事前に想定した許容損失額に達するほどの損失が出た場合、その資産を売却してしまえば、それ以上の損失を被ることはありません。
また、それ以前の段階で損が出た時に売却すれば、損をする度合い(失われる金額)を減少させることもできます。1億円が10%下がれば1000万円の損失ですが、5000万円を売却して残り半分の5000万円が同様に10%下がると500万円の損失ですみます。
資産を売却すると、当然ながら変動する金額の幅は小さくなるので、リスクは小さくなるのです。
「損をするにつれてその資産を売却する」は、大損を避けるリスク管理の一つです。
一方で、値下がりした資産をさらに買い足す「ナンピン」と呼ばれる手法もあります。
しかしこれは、リスク管理の話ではなく、損を取り戻してより儲ける可能性を高めようという、リターンを追及する投資手法です。
分散投資そのものは、リスクを小さくする投資手法です。
しかし分散投資のリバランスは、値下がりした資産を買い足す要素があるため、ナンピンと同じ考え方ともとらえることができます。
見方を変えるとリバランスは、リスク管理手法ではなくリターン追及手法とみなすこともできるのです。
資産ポートフォリオを説明する
FP相談業務として、資産運用のポートフォリオについて説明をすることがあります。
資産のポートフォリオとは、手持ちの金融資産構成(不動産を除いた、現金、預金、株などの資産構成)のことを表します。
手持ち資金の全額を投資するわけにもいきませんし、不測の事態に備えて、ある程度の現金を手元に置いておくことも大切です。
では、どれくらいの現金を手元におき、どれくらいの金額を投資目的で使えばよいのでしょうか。
この答えは、各人の収支の額や、お金に対する考え方によっても異なってくることろではあります。
一つの目安として、下記のような考え方があります。この目安を参考に、相談された方の状況を考慮の上、それぞれの資金の額とその理由を含めて、アドバイスをしていけばよいでしょう。
すぐに利用可能な手持ち資金
いざという時のために手元に置いておくお金です。生活費の6か月〜1年分をおいておくとよいですが、長期間仕事がないことにも備えるなら、1年半〜2年分でもよいです。流動性と換金性が特に重要なので、普通預金などで用意をしておきます。
使用予定のある資金
およそ5年以内に使うことが決まっており、かつそのお金がないとライフイベント上の問題が発生するお金です。たとえば、住宅購入資金、子どもの教育費、自動車買換え資金などです。適切な流動性と、元本割れしない仕組みの金融商品で用意するのがよく、定期預金や個人向け国債などを活用します。
投資資金(資産運用資金)
以上のお金を除いたうえでもなお余っているお金は、投資に使える資金です。投資資金といっても、安定運用型(社債、債券型投資信託)と、積極運用型(株式、外貨商品)とに分けて管理するとよいです。
資産運用にこだわらず年収アップの提案も
貯蓄がなかなか貯まらない顧客へのアドバイスで、多くのFPが「資産運用で備えましょう」と提案します。
ところで、資産運用以外に対処法はないのでしょうか?
資産運用は一つの方法ではありますが、年収がアップする提案をすることも一つの方法です。FPであれば、やはり資産運用に関心が向いてしまうのだと思いますが、それだけが唯一の解決策ではありません。
収支の改善に当たり、年収がアップするようなキャリアプランを提案したり、その人に無理のない範囲で副業やアルバイトの提案もありだと思います。
収入が足りない方へ「資産運用で何とかしましょう」というだけでは、「あなたの年収アップは期待できないよね」と間接的に言ってるようなものです。
資産運用の重要性も理解できますが、資産運用以外でも、収支の改善はできます。FP提案において、上記のような働き方の具体的提案できるようになっておけば、顧客相談の幅が広がりますね。
年収アップ提案については、働いて収入をアップするアドバイス をご覧ください。
投資の儲け話・投資書籍の裏事情
書店では「株で●●万円儲けた」「FXで年利●●%」などといった書籍を見かけます。
これらの書籍は、株価上昇相場(円高・円安相場)のときにはよく売れます。
しかし、急激な下落相場や「100年に1度の大不況」などといわれる時代には、これらの本の売れ行きは止まります。
逆に「100年に1度の大不況はなぜ起こったのか」とか「●●こそが世を不景気にした元凶だ」などといった本が売れるようです。
本のタイトルは、本が売れやすくなるように、多くの人の注目を引くようにという思惑でつけられます。
株の上昇相場や為替の大トレンドが発生しているときは、それなりに儲ける人は出てくるので、本の筆者も探しやすい。
逆に下げ相場ではそういった人も出てこないので、著者を探しづらく、また読者からの共感も得にくく、本を出版しにくいという事情があります。
本の出版側は、読者が儲かる/損するということには関心がありません。
重要なのは、本が売れるかどうかです。
投資の書籍を読んで利益を出せるかどうかは、結局のところ、投資家の実力によって決まります。
本のタイトルだけにとらわれず、日々学ぶ心が重要です。
実務力を高め、顧客に価値を届けたいFPのみなさん、ぜひご参加ください!
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