5種類あるFP2級実技試験、違いと選択のポイント
このページでは、FP技能士2級の実技試験の違いと選択のポイントについてまとめています。
FP3級の実技試験については、下記ページをご覧ください。
FP技能士試験の2級は、受験申込み前に、以下の2つをあらかじめ決定しなければなりません。
- 受験の申込先となる、試験機関を選択(FP協会 or きんざい)
- 5種類の中から実技試験を選択
どちらの試験機関で受験すればよいか、そしてどの実技試験を選択すればよいかは、FP受験者の悩みの種となっています。
というのも、試験機関であるきんざい(金財)とFP協会は、この点についてわかりやすく説明していないからです。
さらにやっかいなことに、選択した実技試験の種類によって、使用すべき教材にも違いが生まれます。受験対策で購入するテキストや問題集を誤ってしまうと、適切な学習ができなくなります。
そこでこのページでは、試験機関と実技試験の選択のポイントを、わかりやすく解説しています。
2つある試験機関のいずれかで受験する
FP技能士という国家試験は、FP協会と、きんざい(金財)の、2つの試験機関によって運営されています。他の多くの資格試験は、ある一つの機関が実施していますが、それとは大きく異なります。
受験者の皆さんは、FP協会か、きんざい(金財)かのどちらかを選んで、申し込みをしなければなりません。
ここで知っておいていただきたいポイントとなりますが、FP協会かきんざい(金財)かという試験機関の選択の前に、
どの実技試験で受験するかを選択する
ことが重要なのです。
なぜなら、受験する実技試験を選択すれば、申込みをすべき試験機関が自動的に決まるからです。
まず実技試験を選択
→ それに応じた試験機関で受験申込をする
という順序で決めていくことを、知っておいてください。
それでは次に、複数種類ある実技試験の違いとその選び方を、詳しくご説明していきます。
実技試験の種類
FP2級の実技試験には、以下の5種類があります。
実技試験 | 受験者 割合 |
試験機関 |
---|---|---|
個人資産相談業務 | 40.3% | きんざい (金財) |
生保顧客資産相談業務 | 18.6% | |
損保顧客資産相談業務 | 0.3% | |
中小事業主資産相談業務 | 4.1% | |
資産設計提案業務 | 36.7% | FP協会 |
※受験者割合は、2017年1月、5月、9月の試験の合計受験申込者数より算出。
過去の受験者割合を見ていくと、FP協会の実技試験を選ぶ人の割合が年々増加しており、逆にきんざい(金財)の受験者割合は全体的に低下傾向にあります。
ただ、損保顧客と中小事業主の実技試験は、少数割合ながらも安定的に受験者がいることがわかります。
2015年のデータ
実技試験 | 受験者 割合 |
試験機関 |
---|---|---|
個人資産相談業務 | 43.8% | きんざい (金財) |
生保顧客資産相談業務 | 19.8% | |
損保顧客資産相談業務 | 0.3% | |
中小事業主資産相談業務 | 4.6% | |
資産設計提案業務 | 31.5% | FP協会 |
※受験者割合は、2015年1月、5月、9月の試験の合計受験申込者数より算出。
2013年のデータ
実技試験 | 受験者 割合 |
試験機関 |
---|---|---|
個人資産相談業務 | 42.9% | きんざい (金財) |
生保顧客資産相談業務 | 28.6% | |
損保顧客資産相談業務 | 0.4% | |
中小事業主資産相談業務 | 4.0% | |
資産設計提案業務 | 24.0% | FP協会 |
※受験者割合は、2013年1月、5月、9月の試験の合計受験申込者数より算出。
この5つの2級実技試験の違い
きんざい(金財)の生保顧客と損保顧客
3級でも、きんざいの保険顧客の実技試験がありましたが、2級ではさらに生保顧客と損保顧客とにわかれます。生保と損保の実技試験の特徴は次の通りです。
- 保険分野(リスク管理の分野)からの出題だけで配点の40%を占めます。保険分野の試験対策が最も重要となります。
- 保険会社に勤めている、保険を扱う仕事をしている、またこれらの業務に将来就きたい場合に適しています。試験勉強で学ぶことが、仕事に直結します。
- 生保顧客の試験では、生命保険や医療保険のみが出題され、損害保険に関する出題はありません。
- 逆に損保顧客の試験では、地震保険や火災保険、自動車保険など損害保険のみが出題され、生命保険や医療保険に関する出題はありません。
- いずれも、保険に関する経理処理について出題されるため、少なからず会計知識があったほうが有利です。(簿記3級があればひとまず大丈夫です)
- いずれも、税(所得税、法人税、贈与税、相続税)に関する出題比率は、きんざいの個人資産・FP協会の資産設計より高めです。税になじみがあれば有利です。
生保顧客と損保顧客とは、保険の種類が異なる以外は、ほぼ同じ傾向の試験です。
ご自身が親しみを持つ方を選択すればよいでしょう。
ただし、損保顧客を選ぶ場合は、注意すべき点があります。
損保顧客の試験は、毎年9月にしか開催されないこともあり、全受験者の0.4%の人しか選択していません。その影響で、対応した実技対策の受験対策テキスト・問題集がほとんど出版されていない点に注意してください。損保顧客に対応したテキスト・問題集は、きんざい(金財)が出版している一部の書籍くらいですので、早めに購入しておきましょう。
なお、生保顧客に対応した受験対策テキストや問題集はたくさんありますが、対応しているかどうかが明記されていない書籍も存在します。購入の際は、生保顧客の実技試験に対応しているのかを、十分に確認をして下さいね。
きんざい(金財)の中小事業主
中小事業主の実技試験は、他の実技試験と比べてやや異質な点があり、次のような特徴があります。
- その名の通り中小企業の経営者や、資産家をお客様に想定した試験内容です。これらのお客様は、業界では「富裕層」とも言われている層です。
- 受験者ご自身やそのご家族が、自営業者や経営者である場合、経営者をお客様としてビジネスをされている場合(例えば税理士など)、いわゆる「富裕層ビジネス」に関わっている場合には、出題される問題に親しみを感じられます。
- 逆に、これらに関わりがない人にとっては、なじみのないことが多く出題される試験です。一般市民ではなく経営者、富裕層の観点での出題が多いためです。
- 企業年金、法人税申告書、非上場株価計算など、他の実技試験では出題されない事項が多くあります。
- この実技試験の受験者も少なく、全受験者数の4%にすぎません。対応した参考書も数は少なく、きんざいが出版している一部の書籍に限定されます。したがって、一般的には試験対策がしづらい試験です。
- ちなみに、現役でファイナンシャルプランナーとして活躍している方であっても、この中小事業主の実技試験を解けない人は多くいます。
中小事業主の試験において、デメリットのような説明が多くなりましたが、次のような利点もあります。
- FP1級技能士の学科試験と、出題範囲や出題傾向が似ています。というのも、FP1級技能士の試験が、富裕層や資産家のコンサルティングに比重を置いた試験だからです。
- したがって中小事業主の実技試験を選択すると、1級学科対策も一部ですが兼ねて学習できます。(他の2級実技試験と1級学科試験は、出題傾向は大きく異なるので、直接の対策にはなりません)
- そのため、2級合格後すぐに1級学科を受験するなら、選択する価値はあります。
- 想定している顧客が経営者や資産家であるため、高額な報酬につながるビジネスで必要となる知識が得られます。この業界を目指す人なら、選択する価値はあります。
中小事業主の実技試験は、他の実技試験と傾向が異なっているため、出題内容になじみを感じられる人にのみ、お勧めできる試験です。
きんざい(金財)の個人資産と、FP協会の資産設計
この2つの実技試験には共通して、次の特徴があります。
- 大半の日本人の生活に直結した内容が出題されます。そのため、自己研さんやご自身の家計改善のために受験する場合に、最も適しています。
- ファイナンシャルプランナーとして、年金、保険、資産運用、不動産、相続など幅広くお金の相談に乗るスキルが得られます。
- この2つの試験を合わせて、77%の受験者が選択しています(2017年)
- 多くの受験者がいるため、市販の試験対策テキスト、問題集が充実しています。
- 上で説明した、他の実技試験を選択すべき理由がない場合は、この実技試験を選択したほうが無難です。
一般的にはこの2つの試験のうちの、いずれかを受験する方が多くなるでしょう。
きんざいの個人資産と、FP協会の資産設計とは、類似性がありますが、微妙な違いもあります。
世間では、FP協会ときんざい(金財)の実技試験で、どのような違いがあるのか、が話題になっています。この話題は本質的に、この2つの実技試験の比較についての議論なのです。
その議論よりも重要なことは、さきほどお伝えした通り、
まず実技試験を選択
→ それに応じた試験機関で受験申込をする
という点です。なぜなら、実技試験が決まれば、申込みをすべき試験機関は、次のように自動的に決まるからです。
実技試験の種類 | 試験機関 | |
---|---|---|
個人資産相談業務 | ⇒ | きんざいで申込 |
生保顧客資産相談業務 | ||
損保顧客資産相談業務 | ||
中小事業主資産相談業務 | ||
資産設計提案業務 | ⇒ | FP協会で申込 |
ここはとても重要な点なので、ぜひご認識くださいね。
そのうえで、きんざい(金財)の個人資産と、FP協会の資産設計、の2つの実技試験の違いは、次のページで詳しくご説明しています。
ひとまず、実技試験の全体的な違いのことの方が重要なので、実技試験の解説を続けます。
出題分野の違い
試験範囲である6分野のうち、出題される分野は次の通りです。
○:出題される、×:出題されない
(きんざい) 個人資産 中小事業主 |
(きんざい) 生保顧客 損保顧客 |
(FP協会) 資産設計 |
|
---|---|---|---|
ライフプランニング と資金計画 |
○ | ○ | ○ |
リスク管理 | ×(*1) | ○ | ○ |
金融資産運用 | ○ | × | ○ |
タックス プランニング |
○ | ○ | ○ |
不動産 | ○ | × | ○ |
相続・事業承継 | ○ | ○ | ○ |
「FP協会の資産設計」の実技試験は、6分野すべてから出題されます。一方できんざい(金財)の実技試験では、出題されない分野があります。
もし、実技試験しか受けないという場合でかつ、学習したい分野を減らしたいなら、きんざい(金財)の実技試験を選択するのもよいでしょう。
*1 2018年9月の中小事業主の試験で、保険経理処理に関する〇×問題が、1問だけ出題されました。中小事業主の試験で保険の問題が出題されたのはこれが初めてのことであり、今後も傾向として続くのかどうかは注目していきます。
受験される方は、念のため注意をしてください。
テキストや問題集を買う前に、実技試験を決めよう
実技試験選びのもう一つ重要なポイントですが、実技試験の選択によって、購入する試験対策テキストや問題集も変わるということです。買ったテキストや問題集が、自分が受験する実技試験に対応していない場合、適切な学習ができなくなり、合格の可能性を落とすことにもなります。
実技試験選びが、何より最優先なのです。
したがって、どの実技試験を選択するかを先に決めてから、テキストや問題集を買いましょう。
実技試験選びで、悩まなくてよい人もいます
次に当てはまる方は、実技試験選びで悩む必要はありません。
会社で一括申込みする人
受験する実技試験を、会社のほうで決定していますので、社員の方は残念ながら自分で選ぶことができません。どの実技試験を受験するかを、会社に問い合わせ、把握しておきましょう。
金融機関にお勤めの方は、このパターンになる人も多いですね。
資格スクール・通信教育を利用している人
申し込んだスクールや通信教材は、それぞれ対象としている実技試験があらかじめ決まっています。
既に高いお金を払ったわけですから、その教材が対応している実技試験を選択するのが合理的です。
過去問を見て「この実技試験がいい!」と思った人
どの実技試験を受験するかに悩んだら、ぜひ過去問にも目を通してみて下さい。
試験の過去問は、きんざい(金財)またはFP協会のホームページから無料で誰でもダウンロードできます。
今の時点では真剣に問題を解かなくてよいので、実際の出題内容をざっと確認してみましょう。
出題内容になじみを感じられ、解きやすそうだと感じた試験を選ぶのも、一つの立派な選び方です。
他人のアドバイスや口コミよりも、「この実技試験が解きやすそうだ!」という直感のほうが、アテになるものです。
結論:どの実技試験を選ぶべきか
どの実技試験を選べばよいかでお悩みなら、次のようにして決めてみましょう。
- 生保顧客ではなくどうしても損保顧客を選ぶべき理由がある人、損保顧客が一番よさそうだと感じた人は、損保顧客の実技試験を選びましょう
- 2級の時点から富裕層顧客・資産家のコンサルティングに役立つ知識を得たい人、またそのような業界で仕事をしたい人、2級ではなく次の1級試験に最大の焦点を当てている人は、中小事業主の実技試験を選びましょう。
- それ以外の方で、保険の領域に強い関心がある人、保険の仕事に就くことを想定している人は、生保顧客の実技試験を選びましょう。
- それ以外の方は、きんざいの個人資産か、FP協会の資産設計を選ぶとよいでしょう。
結果的に多くの受験者は、
- きんざい(金財)の、個人資産
- FP協会の、資産設計
のいずれかを選択することになるでしょう。この2つの実技試験の違いについては、次のページでさらに詳しくご説明いたします。
筆者は、毎回のFP試験を細かく分析しており、2000人以上のFP試験受験者にお会いし、アドバイスをしてきました。しかもFP6分野のビジネスに関わっており、その観点からも、実技試験の違いについてご説明しました。
このページを参考のうえで、さらに皆様ご自身の受験目的と前提知識なども加味して、適切な実技試験を選択いただければ幸いです。
繰り返しとなりますが、受験にあたって大切なことは、
まず実技試験を選択
→ それに応じた試験機関で受験申込をする
→ 受験する実技試験に対応したテキスト、問題集を選ぶ
という順序です。実技試験選びは、慎重かつ丁寧に行って下さいね。
なお、受験申し込みが開始される時期に、 受験前に役立つ情報満載!FP技能士3級2級合格ガイダンス会 を開催しています。皆さんの個別の事情や質問も考慮して、実技試験のアドバイスを行っていますので、お気軽にご参加くださいね。
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